F-03補助保守かご停止事象 調査報告

提出先:榊 真琴
提出:水無瀬 澪

真琴さんへ。

F-03補助保守かごの停止について、現地確認から復旧確認まで追ったので、分かった範囲をまとめます。

1. 先に結論

今回追えた範囲では、ガイドレール継目そのものが最初から一定量ずれていた、というだけでは説明できませんでした。

右側へ荷重を偏らせた時に異常がはっきり再現し、支持・締結側にも新しい移動痕が出ています。

支持側を基準位置へ戻し、締結部を補修した後は、同じ偏荷重条件でも異常は再現しませんでした。

なので、今回の停止につながった故障機構としては、

荷重が偏った時にガイドレール継目周辺の支持側が動き、走行面の段差か角度が増えて、かごの案内部へ衝撃が入った

可能性が高いと考えています。

ただし、支持側が動く状態になった原因がB-19の制御落下なのか、それ以前からの劣化や補修状態によるものなのかは分かりません。

そこは分けて考えた方がいいです。

2. 最初に確認した状態

F-03の主昇降路は動いていました。

停止していたのは補助保守かごです。

記録上、B-19制御落下と同時刻に横加速度が閾値を超えて緊急停止しています。乗員はいませんでした。停止後は制動保持されています。

この時点では、制御落下と停止の因果関係は確定していませんでした。

補助保守かごが使えない影響で、第8避難所向けの物資は迂回して運ばれていました。

私も大型台車の搬送を一便手伝いました。

一便を運ぶこと自体はできましたが、途中の1~2cm程度の段差でも、重い台車はそのまま押しただけでは越えられませんでした。

人を付けて、荷物を動かして、越えさせることはできます。

でも、継続して同じやり方で補給するのは無理があります。

設備停止による生活側への影響としては、この部分は実際に確認しています。

3. 最初の現地点検

静的な一次点検では、駆動、制動、懸垂側に、停止原因と判断できるような大きな異常は見つかりませんでした。

ただし、これで内部故障や通電時だけ出る異常まで否定できたわけではありません。

走行案内側では、片側のガイドシューに偏摩耗と新しい擦過痕がありました。

その近くの古いガイドレール継目で、

走行面段差 0.95mm以上1.00mm未満、
新しい赤錆粉、
座金の古い位置を示す輪郭、
打診時の戻りの鈍さ

を確認しました。

停止時の横加速度ピーク位置も、この継目付近とほぼ一致していました。

このため、この継目を第一候補にしました。

ただ、この時点ではまだ「ここが原因」とはしていません。

段差があることと、停止させたことは別だからです。

4. 荷重を変えた試験

無人・無積載の低速試験では、問題にしていた高周波側の異常は再現しませんでした。

試験錘75kgを右側へ偏らせると、上下のガイドローラーが続けて継目を拾うような二重の打音と、高周波の衝撃が再現しました。

同じ75kgを左側へ移すと、異常は弱くなりました。

右75kg試験の後には、座金の古い輪郭の縁に、新しい赤錆粉の細い筋が増えていました。

ここで、最初に見えていた約1mmの段差が固定されたまま存在しているのではなく、

荷重条件によって継目か、その支持側がわずかに動いている

可能性が高くなりました。

5. 支持側の確認

その後の再点検で、継目の下側にあるブラケット周辺から、

調整シム端の新しい擦過痕と、
長穴ボルト座金が古い位置から動いた跡

を確認しました。

ここまでで、レールの走行面だけを見るより、支持・締結側を疑う方が現象と合っています。

ボルドさんからは、制御落下前、B-19側で人と荷物を逃がしていた時に、一センチくらい動いたように見えたという現場経験についても聞きました。

ただし、これはその場で計測された値ではありません。

何が何に対して一センチ動いたのかも特定できません。

参考にはなりますが、今回の異常と直接つながる証拠としては扱っていません。

6. 支持側を戻した時の結果

S-07で支持フレームを基準位置まで戻して保持した状態では、継目段差は 0.20mm以上0.25mm未満まで小さくなりました。

その状態で右75kg、左75kgの無人低速試験を行うと、二重打音は出ませんでした。

ただし、保持力を一部抜いたところ、健全部を基準に同じ指定点・同じ指定方向で測った支持フレームの位置が、0.4mm戻りました。

なので、この段階では直ったとは判断できませんでした。

機械で引いている間だけ位置が合っていても、手を離したら戻るなら復旧にはなりません。

7. 補修後

支持フレームを基準位置へ保持したまま、支持側を補修しました。

古いシムを抜いて厚みを確認し、新しいシムへ交換。

長穴側のボルトと座金を交換。

支持ブラケット側は再確認後、当て板を追加しています。

締結後、S-07の保持を段階的に抜きました。

保持圧ゼロ、ワイヤー張力ゼロまで落としても、変位計表示は動きませんでした。

前に出た0.4mmの戻りも再発していません。

その後、右75kg、左75kgで無人低速試験を行いましたが、二重打音は再発しませんでした。

継目とレール直線性を再測定し、ロガーにも問題にしていた異常ピークは出ていません。

その後、有人で1名、2名、5名、9名と段階的に確認しました。

各段階の間で停止、再隔離、目視確認を行っています。

最終9名の確認には私も乗りました。

その範囲では、以前の二重打音も、同じ異常も出ませんでした。

8. 現時点で分かったこと

今回の異常については、

偏荷重で支持側の変位を伴う異常を再現できたこと、
その支持側を補修した後、同じ条件で異常が再現しなくなったこと

までは確認できました。

なので、今回追っていた故障については、支持・締結側の変位が主要な要因だったと考えていいと思います。

一方で、

支持側がいつから動く状態だったのか、
B-19制御落下が直接それを起こしたのか、
それ以前の老朽化や過去の補修状態がどこまで関係していたのか

は確認できませんでした。

停止時に積載物があったか、あった場合の量や配置・偏りも分かっていません。

ここから先を断定すると推測になります。

9. 現在の扱い

今回追っていた異常については、補修後の試験で再発していません。

ただし、これは通常運用への正式再開まで確認した、という意味ではありません。

今回確認したのは、補修後の低速試験と段階的な有人確認までです。

一般利用をいつ、どの条件で再開するかは昇降局側の判断になります。

私が確認できたのは、

「何をすると異常が出るか」まで再現できて、
その部分を直した後、同じことをしても異常が出なくなった

ところまでです。

B-19との因果については、今ある記録だけで結びつけるのは早いと思います。

そこは推測で埋めていません。

以上です。

水無瀬 澪

おすすめの記事