『バベル:リビルド』
第1話「詰まり」プロット詳細版 v0.4
01-A
黒海
黒い海。
巨大な壁。
その壁面に、 無数の増築物が張り付いている。
錆びた鉄骨。 漏れ続ける蒸気。 外壁を這う配管。
遠くから、 低く唸る都市循環音。
ナレーションはない。
ただ:
- 波音
- 蒸気音
- 金属の軋み
だけが響く。
黒海は、 人類が敗北した世界そのものだった。
01-B
B-19外壁区画
給水停止。
住民たちが、 空の給水タンクを囲む。
子供が蛇口を捻る。
何も出ない。
老婆:
「……また止まったのかい」
男:
「中央は流れてるんだろ!?」
別の男:
「こっちは三日だぞ!」
蒸気の向こうで、 巨大主幹配管が唸る。
水は流れている。
だが、 ここには来ない。
01-C
工事区域
巨大主幹配管。
違法増設された仮設設備。
ワイヤー移動する少女。
雨宮ヒナセ。
工具バッグ。 汚れた作業服。
ヒナセ:
「固定完了!」
下からボルド。
ボルド:
「回転数落とせ。 焦ると割れる」
ヒナセ:
「わかってる!」
細長い穿孔工具が、 低速回転を始める。
金属を削る音。
01-D
ボルドの説明
若い作業員。
不安げ。
作業員:
「本当に持つんですか……?」
ボルド:
「持たせる」
作業員:
「接続したら、 主幹圧が……」
ボルド:
「40分だ」
全員が止まる。
ボルド:
「40分耐えれば、 循環炉が立ち上がる」
古いモニタ。
赤い流量警告。
ボルド:
「起動できれば、 B-19は生きる」
沈黙。
ボルド:
「失敗すれば、 下流が死ぬ」
誰も反論できない。
01-E
昇降局
巨大昇降機前。
人で溢れている。
- 作業員
- 技師
- 負傷者
- 保安群
蒸気。
赤警告灯。
城崎ナギ。
缶コーヒー。
疲れた顔。
通信。
レイカ(音声):
「B-19応力増加継続。 違法接続エリア拡大」
ナギ:
「はいはい…… 今日も最悪っと」
巨大昇降機が開く。
人が押し込まれる。
01-F
エレベーター内部
超満員。
鋼鉄製昇降機。
誰も喋らない。
肩がぶつかる。
作業員:
「すみません」
ナギ:
「慣れてる」
通信。
レイカ:
「主幹B-19、 32分以内に応力限界予測」
ナギ:
「……短いな」
疲労の顔が消える。
現場の顔になる。
01-G
管制室
巨大制御室。
空中ディスプレイ。
都市断面図。
篠宮レイカ。
整った制服。
真面目な少女。
ナギが後ろから覗く。
ナギ:
「何人いる?」
レイカ:
「推定300以上」
ナギ:
「うわぁ……」
レイカ:
「循環炉起動準備中。 完了まで約40分」
赤い応力波形。
レイカ:
「接続後、 下流区画圧力低下予測」
ナギ:
「止めないと死ぬか」
レイカ:
「はい」
ナギ:
「……わかってるよ」
01-H
保安群ブリーフィング
巨大工場型格納庫。
S-07 アンカー。 K-03 ドリルクロー。
蒸気。
油圧音。
立花セナ。
白パイロットスーツ。
白ヘルメット。
緊張。
九条カイ。
機体を見上げる。
カイ:
「今回はえらく人数多いな」
ナギ、 前へ。
ナギ:
「目的は制圧じゃない」
全員が見る。
ナギ:
「主幹応力を止めること。 崩落起こしたら終わり」
空中ディスプレイ。
外壁構造図。
ナギ:
「住民多数。 無理押し禁止」
カイ:
「でも止めるんでしょ?」
ナギ:
「止める」
沈黙。
ナギ:
「……だから難しい」
セナ、 静かに俯く。
01-I
発進
格納庫シャッター開放。
蒸気噴出。
巨大フレーム前進。
重い足音。
セナ、 コックピット内。
狭い。
暑い。
呼吸音。
管制:
「S-07状態正常」
セナ:
「S-07、了解」
カイ:
「K-03、出る」
01-J
昇降路降下
超狭い縦坑。
側面ギリギリ。
蒸気。
赤灯。
アンカー先行。
後方にドリルクロー。
セナ:
「……狭い」
カイ:
「止まるなよ。 詰まったら終わる」
セナ:
「わかってる」
手は汗ばんでいる。
01-K
外壁側警報
警報。
怒号。
外壁民:
「来たぞ!!」
ヒナセ、 見上げる。
蒸気の向こう。
白い巨体。
誰か:
「昇降局だ!!」
ヒナセ、 アンカーを見る。
巨大。
白い。
重い。
怪物のようだった。
01-L
初接触
アンカー停止。
セナ、 拡声通信。
セナ:
「こちら昇降局保安群! 工事停止を要求します!」
怒号。
外壁民:
「ふざけるな!!」
「こっちは死ぬんだぞ!!」
「水がねぇんだよ!!」
セナ、 言葉を失う。
カイ:
「セナ」
セナ:
「……」
カイ:
「押すぞ」
01-M
戦闘開始
ワイヤー。
火炎。
工具。
工事機械。
ヒナセ、 ワイヤー移動。
溶接火炎噴射。
ヒナセ:
「近づけるな!!」
火花。
だがアンカーは止まらない。
カイ:
「うわ、 本当に工事道具で来てる」
ドリルクロー、 足場切断。
崩落防止。
カイ:
「セナ! 左支えろ!」
セナ:
「了解!」
01-N
事故
外壁民がアンカーへ飛びつく。
セナ:
「危ない!!」
咄嗟に振り払う。
人影が飛ぶ。
静寂。
セナ:
「……え」
カイ:
「セナ!!」
警報。
レイカ:
「主幹応力急上昇! 崩落来ます!!」
01-O
崩落
巨大音。
壁面崩壊。
違法増築が裂ける。
悲鳴。
ヒナセ:
「っ……!!」
アンカー前進。
セナ:
「支える!!」
巨大腕が、 崩落構造物を受け止める。
フレーム軋み。
油圧悲鳴。
カイ:
「おいおいおい、 マジかよ!!」
アンカー、 片膝をつく。
セナ:
「まだ……!」
外壁民たち、 呆然。
怪物が、 自分たちを守っていた。
01-P
工事失敗
ボルド、 停止した流量表示を見る。
ボルド:
「……終わりだ」
循環炉停止。
ヒナセ、 崩れ落ちる。
ヒナセ:
「……水……」
見上げる。
アンカー。
白い巨体。
蒸気。
歪んだ腕。
コックピット開放。
降りてきたのは。
汚れた白スーツの少女。
震えていた。
01-Q
選別局
静かな観測室。
古い端末。
コーヒー。
榊真琴。
水無瀬澪。
真琴:
「保った方だ」
澪:
「……まだ住民がいます」
真琴:
「だから苦しい?」
澪、 答えられない。
モニタには、 停止したB-19。
01-R
深夜
回収作業。
軌道レッカー。
ワイヤー固定。
アンカー、 まだ崩落を支えている。
セナ、 呆然と座る。
ナギが来る。
缶コーヒーを差し出す。
ナギ:
「飲む?」
セナ:
「……」
ナギ:
「初めて?」
沈黙。
セナ:
「……私、 やっちゃって」
ナギ、 少し空を見る。
ナギ:
「うん」
セナ、 震える。
ナギ:
「でも、 崩落は止めた」
遠くで、 軌道レッカーの金属音。
ナギ:
「誰かを守るって、 気持ちいいだけじゃないんだよ」
セナ、 答えられない。
アンカーは、 まだ重さを支え続けている。