
俺はここ、かなり大事な分岐点だと思う。
そして率直に言うと、
「仲間か子供かを選ぶ」話にしない方がいい。
理由はヒナセというキャラクターとズレるから。
澪なら選ぶ。 真琴なら選ぶ。
でもヒナセは違う。
ヒナセはまず、
「なんでそんな二択なんだよ」
って怒る人間だ。
だから03-Gの澪と同じ構造をヒナセでやると、 ヒナセらしさが消える。
むしろ03-Hは
"選別を拒否する話"
の方が面白い。
例えば。
断水。
再び止まる。
皆が絶望。
ミネ
「貯められたのは30リットルだけだ」
ボルド
「作業班優先だ」
誰か
「子供優先だろ」
誰か
「老人だ」
誰か
「病人だ」
揉め始める。
ここでヒナセ。
黙って聞いている。
そして
「全員分にする」
と言う。
周囲
「無理だ」
ヒナセ
「知るか」
「3リットル必要なら」
「1リットルで済む方法考えろ」
「水を増やせないなら」
「必要量を減らせ」
これ。
実はヒナセらしい。
ヒナセは技術者なんだ。
だから
澪 →選ぶ
真琴 →切る
ヒナセ →条件を変える
なんだよ。
例えば。
飲料専用。
洗浄禁止。
調理方法変更。
共用化。
蒸留。
回収。
配給。
雨水利用。
結露回収。
ありとあらゆる抵抗を始める。
ヒナセ
「足りねえなら工夫しろ!」
「生きるための工夫を!」
「まだ終わってねえ!」
これがヒナセ。
そして俺が一番好きなのは、
子供に3リットル渡す展開じゃなくて、
子供
「お姉ちゃんは飲まないの?」
ヒナセ
自分の水筒を振る
空
「私は後だ」
「ガキが先」
でも次のシーンで
ボルドが黙って自分の分を渡す。
ヒナセ
「いらねーよ」
ボルド
「隊長命令だ」
みたいなやつ。
これだと
ヒナセは選別しない。
でも自分は削る。
これがヒナセの善性だと思う。
そしてもっと重要なのは、
この世界で初めて
「澪は切った」 「ヒナセは足掻いた」
という対比ができる。
03-Gで澪が選別をした。
03-Hでヒナセは選別を拒否する。
この対比はかなり強い。
しかもどちらも間違っていない。
だから物語になる。
俺なら03-Hは
「誰を助けるか」
じゃなく
「全員助けたいという無謀な抵抗」
を描く。これはヒナセにしかできない話だから。
うん、その方向はかなりヒナセらしい。
むしろ03-Gと03-Hでテーマの対比が綺麗に出る。
03-G 澪
「他にできることは?」
↓ ない
↓ 切る
↓ 被害を限定する
03-H ヒナセ
「他にできることは?」
↓ ない
↓ それでも足掻く
↓ 被害を減らす
結果だけ見ると実は同じなんだ。
二人とも
"限られた資源をどう使うか"
を考えている。
でも思想が違う。
澪は管理者。
被害を最小化する。
ヒナセは現場。
生存者を最大化する。
どっちも正しい。
だから面白い。
そして03-Hはたぶん、
「水をどう配るか」
より
「水が足りない前提で何を変えるか」
の方がヒナセらしい。
例えば。
ミネ
「30リットルしか貯まらなかった」
誰か
「全然足りない」
ヒナセ
「だから避難計画変える」
ボルド
「どう変える」
ヒナセ
配管図を広げる
避難経路図を広げる
「飲み水は1人1リットル」
「洗浄禁止」
「調理禁止」
「途中で補給地点探す」
「結露回収もやる」
「それでも足りなきゃ私が探してくる」
みたいな。
ここで大事なのは、
ヒナセが英雄的に水を配るんじゃなくて、
工学的に問題を解こうとすること。
03-Eが
「閉じているものは開けばいい」
だったように、
03-Hも
「足りないなら条件を変えればいい」
になる。
実は同じ思考回路なんだ。
それと個人的に入れたいのは、
ヒナセが一瞬だけ水を見つめる場面。
苦労して取り戻した水。
数十人には全然足りない。
普通の作品ならここで絶望する。
でもヒナセは
「少ないな」
↓
「じゃあどうするか」
になる。
この切り替えの速さがヒナセの強さだと思う。
澪は考えて苦しむ。
ヒナセは考えて動く。
だから二人とも主人公なんだよね。
03-Hはたぶん、
「勝利の代償」ではなく 「勝利しても問題は解決しない」
を描く回になると思う。
それが『生き延びる工学』の次としてすごく自然。
いや、むしろ俺はかなり好きだな。
BABEL:REBUILDらしい。
普通の作品だと、
「水がない!」 ↓ 「奇跡が起きた!」
になる。
でもこの世界は違う。
ヒナセ
「水がない」
↓
「管の中にはまだある」
↓
「抜け」
これ。
めちゃくちゃ工学的。
しかも数字があるのが良い。
100A配管。
内径100mm近辺。
1mあたり約7.8L。
100mで780L。
避難前の30人。
1日3Lなら90L。
780Lあれば、
理論上は
8日分以上。
もちろん全部回収できない。
残圧。
高低差。
枝管。
沈殿物。
ロス。
ある。
でもヒナセは
「ゼロじゃない」
と考える。
これがヒナセ。
むしろ03-Hで好きなのは、
誰かが
「もう終わりだ」
と言うこと。
ヒナセ
「終わってねえ」
配管図を広げる。
「100A」
「100メートル」
「780リットル」
「全部は取れなくても半分取れる」
「400リットル」
「まだ戦える」
この瞬間。
ヒナセは希望を語っているんじゃない。
計算結果を語っている。
ここが澪との最大の差。
澪は人を見る。
ヒナセは設備を見る。
でもその先に人がいる。
だから読者は
「あ、この子は冷たいんじゃない」
と分かる。
あと地味どころか、
俺はむしろかなり象徴的だと思う。
03-E
「閉じているものは開けばいい」
↓
03-G
「上流を閉じろ」
↓
03-H
「管の中にはまだ残っている」
全部配管の話なんだよ。
でも実際には
澪 =切り捨てる管理
ヒナセ =最後まで搾り取る現場
という思想対立になっている。
かなり美しい構造だと思う。
それに何より、
水を回収するシーンは"生き延びる工学"そのものなんだ。
ドレン弁を開ける。
容器を並べる。
泥混じりの最初の水を捨てる。
透明になったら回収する。
誰かが流量を計算する。
誰かが記録する。
誰かが運ぶ。
地味だけど、全員が生きるために働いている。
BABEL:REBUILDの魅力って、こういうところだと思う。
計算しているヒナセ、悪くない。
でも率直に言うと、
「計算している」だけだと03-Dの系統図見てるヒナセと少し被る。
03-D → 異常発見
03-E → 勝ち筋発見
03-H → 生き延びる手段発見
なので、全部「図面を見て考えている」だと絵として変化が弱い。
俺なら候補は3つある。
A案「残水量を計算するヒナセ」
配管図
メモ
チョーク
床に描かれた計算式
780L
400L
30人
みたいな数字。
ヒナセがしゃがんで計算。
メリット
・03-Hの内容を一発で表現できる ・工学感が強い
デメリット
・地味 ・03-Dと近い
B案「ドレン弁から流れ出る水を見つめるヒナセ」
俺はこっちが好き。
巨大な配管。
最下部のドレン。
ポタポタ。
↓
ジャアアアア
容器へ流れ込む水。
ヒナセ
少し笑う。
「まだ残ってた」
みたいな。
これ、
勝利ではない。
でも希望がある。
03-Eが
「勝った!」
なら、
03-Hは
「まだ戦える」
なんだ。
C案「子供たちと水容器」
これが一番感情的。
回収した水。
並ぶ容器。
子供。
老人。
作業員。
ヒナセ。
配管図を持ったまま。
"全員助けたい"
が伝わる。
ただし工学感は減る。
俺なら断然B。
03-D
閉じた遮断弁を見つめるヒナセ
「なぜ止まった?」
03-E
勝ち筋を見つけたヒナセ
「閉じているものは開けばいい」
03-F
通信エラーを見つめる澪
「分からない」
03-G
自分の手を見つめる澪
「私が切った」
03-H
流れ出る残水を見つめるヒナセ
「まだ残ってる」
綺麗に並ぶ。
しかも、
澪のキービジュアルが内面描写なら、
ヒナセは設備描写。
これも対比になる。
ヒナセは人を見ているようで、いつも設備の向こう側にいる人を見ている。
だから03-Hは、
巨大な配管のドレン弁から流れ出る水を見つめるヒナセ
が一番BABEL:REBUILDらしいと思う。
派手じゃない。
でも「生き延びる工学」というテーマを一枚で語れる絵になる。


かなり良い。
まず結論から言うと、03-Hは「ヒナセの勝利回」から「ヒナセの生存回」に自然に移行できている。
03-Eでは
閉じているものは開けばいい
だった。
03-Hでは
残っているものは使えばいい
になっている。
つまりヒナセの思考原理が一貫している。
これは強い。
特に好きなのはここ。
ミネ「もっと日頃から溜めとけば良かったね」
ヒナセ、笑い出す。「! なんか閃いたかも」
「配管の中!」
この流れ。
「後悔」から「発想」に飛ぶ。
ヒナセらしい。
澪なら後悔を抱える。
真琴なら損失計算を始める。
ヒナセだけが
「じゃあ今あるもの使えばよくね?」
になる。
キャラ差が出ている。
あと、
仲間の水か
子供の水か
という二択から逃げたのも正解。
ヒナセは選別をする人間じゃない。
足りないなら、
「足りる方法を探す」
人間。
だから
配管の残留水
に行くのは性格として非常に自然。
工学的にも悪くない。
特に
ドレンから抜く
は現場感がある。
この世界の工作戦は
- 爆発
- 必殺技
ではなく
- バルブ
- 配管
- 滞留水
だから。
むしろバベルらしい。
一方で、少しだけ気になった部分がある。
ここ。
「1メートルの水道管の中には、満タンで約7.9リットル」
「100メートルで、790リットルだ」
「さっき開けた系統は曲がりくねっていてその何倍もあるぞ」
最後の
その何倍もあるぞ
はヒナセが言うより、
ボルドが
「そんなに残ってるのか」
とか反応した方が自然かもしれない。
ヒナセは計算結果だけ出す。
盛るのは周囲。
その方が頭良く見える。
あと一箇所。
ここ。
ヒナセ「さらに汗べちょ」
「いい加減水浴びしたいなぁ」
これは好きなんだけど、
もし感情を強めるなら、
噴き出す大量の水を見ながら
「飲み水なのに浴びるのはもったいないな」
の方が03-Hのテーマに近いかもしれない。
でも今の軽さもヒナセらしいから、どっちでも成立する。
構造的に見ると、
03-E 勝つ ↓ 03-F 澪が追い詰められる ↓ 03-G 澪が切る ↓ 03-H ヒナセが失う ↓ 03-I以降 避難準備
という流れになっていて綺麗。
特に03-Hは、
「勝利の余韻」
ではなく
「勝利しても問題は解決しない」
を描いている。
バベルらしい。
俺ならこれも決定稿候補に入れる。むしろヒナセ回としてはかなり好きな部類。ヒナセがずっと受け身じゃなく、自分で考えて、自分で足掻いて、自分で水を探し出しているから。主人公力が高い。
かなり良くなった。
率直に言うと、前の版より明確に良くなっている。
特に評価したいのは、シャワー描写が「お色気」ではなく「生活インフラの喪失」に変わっている点。
例えばこの部分。
汗だくの湿った服が体にへばりつく。
ヒナセ「まだ顔も体も流してねえ……」
汗だくの体で再度同じ服を着ることに嫌悪感を抱きながら
ここに性的な視線は存在しない。
描いているのは
- 不快感
- 疲労
- 水不足
- 生活水準の低下
なんだよね。
だから世界観を壊していない。
むしろ面白いのは、
03-Eで
水が出た!
という勝利があり、
03-H冒頭で
シャワーが途中で止まる
という敗北が来る。
これで読者は
「勝ったと思ったけど全然勝ってなかった」
を体感できる。
これはかなり効いている。
あとヒナセらしさも非常に強い。
普通の作品なら
「子供に水を譲る」
で終わる。
でもヒナセは違う。
足りない
↓
配る
↓
終わり
ではなく
↓
配管の中を探し始める
↓
ドレンを探す
↓
残水回収を始める
になっている。
ここがヒナセ。
ヒナセは善人ではある。
でも聖人じゃない。
「私が我慢する」
じゃなくて
「水そのものを増やす方法を探す」
人間。
だから
シャワーは我慢する
は自己犠牲ではなく、
単なる資源管理。
その後すぐ
配管の中!
になる。
この流れは非常にヒナセらしい。
あと後半のドレン開放描写も良い。
特に
額から首から、ヒナセの汗が噴き出す。
掌には鉄錆と油の匂いが染みつく。
ここ。
これは色気がある。
でも性的じゃない。
以前話した
「生きている人間の色気」
になっている。
一つだけ微修正するなら、
ここ。
ヒナセ「開いた。全開だ」
の直後。
今は少しあっさりしている。
例えば
激しい水音が地下室全体に響く。
並べられた容器へ次々と水が流れ込む。
ヒナセ、荒い息を吐く。
「開いた。全開だ」
にすると達成感がさらに出る。
ただし必須ではない。
今のままでも十分成立している。
構成面で見ると、
03-E 水を取り戻す
↓
03-F 澪が制御を失う
↓
03-G 澪が再遮断する
↓
03-H 残された水を掘り起こす
という流れになっていて、
物語がちゃんと「反撃→再封鎖→次の工夫」と連鎖している。
だから俺ならこのまま決定稿にして問題ないと思う。
少なくとも03-Hは、今までのヒナセ回の中でもかなりヒナセらしさが出ている回になっている。