『バベル:リビルド』第4話
外壁民・旧保安保守倉庫 生活再建設定資料 v1.1
0. 文書目的
本資料は、B-19地区制御落下後、雨宮ヒナセ、ミネら外壁民36名が、都市の現行台帳から外れた旧保安・保守倉庫で生活を再建していくための基礎設定を統合した資料である。
主な対象は以下。
- 36名の構成と制度上の立場
- 旧保安・保守倉庫の位置、来歴、構造、秘匿性
- 水、食料、排泄、衛生、電力、換気、寝床
- 到着直後と到着24時間後の二段階平面計画
- ボルド不在後の共同体運営
- 都市外部との取引と発見リスク
- 第4話で描くヒナセの人物変化
- 第八仮設避難所との対比
本資料の中心は、避難に成功した人々が安全な場所へ収容される話ではない。
制度から外れた36名が、届かない水を自分たちで探し、壊れた設備を直し、生活の決め方そのものを作り直す話である。
この共同体は、公的保護を拒んで自由に暮らす理想郷ではない。
保障がない代わりに、自分たちで決められる。
自分たちで決められる代わりに、失敗の結果も自分たちで引き受ける。
この両面を崩さない。
0-1. 設定の確定状態
生活再建を描くために必要な中核設定は、v1.1時点で一通り確定している。
v1.1では、成人18名の男女内訳、負傷者の男女内訳、倉庫の暫定寸法、到着直後と24時間後の内部配置を追加確定した。
未確定なのは、危険容器の中身、建築実測に相当する細部寸法、第二避難路の外部接続先、ヒナセの設備代理者、取引中継地点の固有名など、本文または美術設計に入る段階で決めればよい細部である。
確定事項と未確定事項は本資料内で分け、未確定箇所を推測で固定しない。
0-2. v1.1更新内容
- 成人18名を、男性8名、女性10名とした
- 軽傷者3名を、男性2名、女性1名とした
- 倉庫の暫定平面を20m×10m、約200㎡の長方形とした
- F-03側主入口と旧B-19側通路を、中央の同一軸上へ置いた
- 「到着直後」と「到着24時間後」の二段階平面を設定した
- 24時間後には、中央幅2mの避難・運搬通路と全員分の仮寝床を確保した
- 旧点検階段へ抜ける第二避難路は、平面上の案として置いたが、外部接続先は未確定のままとした
- 独立参照資料『旧保安保守倉庫二段階平面図参照資料_v1.0』を追加した
1. 生活再建組の物語上の位置づけ
1-1. 基本定義
B-19地区から逃れた外壁民36名は、都市側の避難名簿や公的受入れに乗った人々ではない。
彼らは、
- 自分たちで水を回収し
- 自分たちで荷物を運び
- 停止した昇降路を移動し
- ボルドの知る旧経路を通り
- 現行施設台帳から消えた倉庫へ逃げ込んだ
人々である。
彼らが持ち出したのは、元の住居ではない。
- 工具
- 水
- 保存食
- 衣類
- 寝具
- 容器
- 修理部材
- 外壁で培った技能
- 共同体内部の信用関係
である。
外壁民の避難は、単なる人口移動ではない。
生きる場所を持ち運ぶこと。
旧保安・保守倉庫は、その荷物と技能を再び生活へ組み直す場所になる。
1-2. 第八仮設避難所との基本対比
第八仮設避難所の避難民は、都市から選別され、命を救われた。
しかし、生活の条件を自分で決められない。
旧保安・保守倉庫の36名は、都市から選ばれていない。
そのため、命を守る制度も、生活物資の定期供給もない。
ただし、何を優先し、誰へ配り、どこを直し、いつ移るかは自分たちで決められる。
最も短い対比は次の通り。
第八避難所には水が届く。しかし、届く時刻も量も自分では決められない。
保守倉庫には水が届かない。しかし、どこから取り、どうつなぎ、どう配るかを自分たちで決める。
2. 第3話から第4話への連続性
2-1. 時系列
| 段階 | 出来事 |
|---|---|
| 03-D『違和感』 | B-19断水。避難予定者は30名。1人1日3L、3日分270Lを目安に水を確保しようとする |
| 03-H『足掻く』 | 給水停止後、ヒナセが配管内残水をドレンから回収する |
| 03-N『下降』 | 30名が工具、水、保存食、生活物資を持ち、D-14から停止中の昇降路へ入り、F-03方面へ下降する |
| 移動途中 | 別に逃れていた6名が合流する。倉庫到着時点で36名になる |
| 03-P『軋み』 | 移動中、B-19の微小沈下を体感する。ボルドが危険を察知し、避難を急がせる |
| 03-V『抗う者』 | 一行は保守倉庫へ到達。ボルドは作戦妨害を続けた後、昇降局に連行される。ヒナセは「後で迎えに行く」と決める |
| 03-X『落下』 | B-19が制御落下。36名の旧居住地が失われる |
| 03-Y『それでも流れる』 | ヒナセは返事のない無線をしまい、倉庫側へ歩き出す |
| 第4話 | 制御落下翌日。倉庫到着からおおむね24時間以内。ボルド不在のまま、ヒナセが山積する生活課題へ対処し始める |
2-2. 30名から36名への増加
03-Dでミネが必要水量を計算した時点の避難予定者は30名である。
その後、B-19から別経路で逃れていた6名が移動途中に合流し、旧保安・保守倉庫への到着人数は36名となる。
したがって、
- 03-Dの「30人分」は誤記ではない
- 第4話の共同体人数は36名
で両立する。
3. 36名の構成
3-1. 人数内訳
| 区分 | 人数 | 備考 |
|---|---|---|
| 成人男性 | 8名 | うち軽傷者2名 |
| 成人女性 | 10名 | うち軽傷者1名 |
| 成人小計 | 18名 | 軽傷者3名を含む |
| 子ども | 15名 | 年齢別内訳は未確定 |
| 高齢者 | 3名 | 自力移動能力の個人差は未確定 |
| 合計 | 36名 |
軽傷者3名は、成人18名の内数である。
- 男性8名のうち、軽傷者2名、一般状態6名
- 女性10名のうち、軽傷者1名、一般状態9名
軽傷者を別に足して39名にはしない。
持病または継続服薬を必要とする人物は、現時点では設定されていない。
3-2. 集団の技能傾向
36名は、単に保護を待つ避難者ではない。
外壁での生活を成立させてきたため、設備、運搬、補修、調理、衛生などの実務技能を持つ者が多い。
ただし、全員が万能な職人ではない。
- 高度な判断を担える者
- 指示があれば作業できる者
- 重量運搬を担う者
- 生活管理を担う者
- 子どもや高齢者を支える者
が組み合わさって共同体が成立する。
3-3. 主要人物
雨宮ヒナセ
- 19歳
- 設備、配管、電気、移動経路、構造危険の現場担当
- ワイヤー機動と外壁移動に長ける
- 「止まったら死ぬ」という行動原理を持つ
- ボルド不在後、若い指導者になりつつある
- 共同体全体の正式な支配者ではない
ミネ
- 40代後半から50代
- 小柄で世話焼き
- 調理、衛生、看護、配給、寝床、事務を担う
- 闇市場と流通経路に詳しい
- 共同体の生活と精神面を支える
ボルド
- 50代
- 元昇降路保守経験者
- 30代の頃、この倉庫または周辺保守系統に関わっていた
- 03-Vで昇降局に連行され、第4話の倉庫側には不在
- 倉庫の場所を都市側へ話さない
主要人物として新たな固有名を増やす予定は、現時点ではない。
4. 旧保安・保守倉庫
4-1. 施設の来歴
倉庫は、かつて外壁側昇降路の保安・保守作業に使われていた施設である。
約15年前に正式廃止された。
廃止後は、現行施設としての名称、施設ID、停止階、設備管理が失効している。
ボルドは若い頃に周辺昇降路の保守へ関わっていたため、倉庫そのものと到達経路を知っている。
4-2. B-19との構造関係
倉庫は、制御落下したB-19本体ではなく、保持側に残った独立支柱系統に位置する。
B-19との間に存在した通路や設備接続の一部は、制御落下によって途切れている。
そのため、倉庫へ到達したからといって、B-19へ戻れるわけではない。
切断側へ続いていた端部は、
- 仮設隔壁
- 廃材板
- 転倒防止した棚
- 防塵布
- シール材
などで仮封鎖し、風、粉塵、湿気、腐食性外気の流入を抑える。
4-3. 記録上の状態
「正式廃止」と「誰も存在を知らない」は同じではない。
倉庫の記録状態は次のように整理する。
| 記録系統 | 現在の状態 |
|---|---|
| 現行施設台帳 | 論理削除または廃止扱い |
| 現行地図・避難案内 | 非表示 |
| 昇降機停止階一覧 | 倉庫直通階は存在しない |
| 施設ID・部屋番号 | 失効 |
| 構造マスター | 名称のない空洞または荷重要素として残る |
| 電力・給排水図 | 廃止枝、切断枝、管理対象外として扱われる |
| 過去の保守報告書 | 旧形式アーカイブに残る |
| 廃止処理記録 | 古い行政記録として残るが、現行設備と直接リンクしない |
このため、通常の施設検索では見つからない。
一方、古い保守記録、F-03利用履歴、構造マスターを意図的に照合し、物理調査まで行えば発見できる可能性はある。
倉庫は「絶対に発見できない場所」ではない。
通常運用の視界から外れている場所。
である。
4-4. 到達経路
初回避難時の大きな経路は次の通り。
- B-19側の荷物集積所を出る
- D-14から停止中の巨大昇降路へ入る
- 索道で人員と荷物を下降させる
- F-03方面へ抜ける
F-03から倉庫までの具体的な経路は次の通り。
- 現役の避難用昇降機は、F-03の公式非常乗降場へ停止する
- 非常乗降場から保守デッキへ出る
- 保守デッキ奥の旧手動防火扉を開ける
- 図面から外れた廃止保守通路を進む
- 旧保安・保守倉庫へ到達する
昇降機は倉庫へ直接停止しない。
昇降記録に残るのは「F-03利用」までであり、F-03から倉庫へ歩いた記録は残らない。
ただし、36名が頻繁に同じ時刻、同じ便でF-03を利用すれば不自然な傾向になる。日常の外出は少人数、時間分散を基本とする。
4-5. 発見可能性
通常のB-19切断面巡回や、現行施設だけを対象とする点検では発見されにくい。
理由は以下。
- 倉庫はB-19本体側にない
- 倉庫へ直接止まる昇降機がない
- 現行台帳と現在地図に名称が出ない
- 監視設備が停止している
- 電力、水、昇降利用が倉庫固有の記録として結びつかない
- ボルドが位置を話さない
- 避難経路だけから現在地を逆算しにくい
ただし、以下が重なると発見リスクは上がる。
- F-03の不自然な利用傾向
- 外部取引相手の追跡
- 廃止枝の継続的な水・電力使用
- 音、廃熱、煙、廃棄物
- 古い保守記録と現地調査の意図的な照合
秘匿性は、施設の魔法的な不可視性ではなく、現行管理から外れていることと、共同体の運用規律によって成立する。
5. 空間と構造安全
5-1. 規模
倉庫の暫定平面は、20m×10mの長方形、床面積約200㎡とする。
平面図上の向きは、絶対方位ではなく経路関係を示す。
- 左側中央:F-03方面へ通じる主入口
- 右側中央:制御落下前にB-19側へ通じていた旧通路
- 上側中央寄り:旧点検階段へ抜ける第二避難路案
この20m×10mは、第4話の生活描写と美術設計に用いる暫定寸法である。躯体の実測値や壁厚、柱、扉幅などの建築細部までは確定しない。
36名で割れば1人当たり約5.6㎡になるが、これは棚、機械、資材、通路を含む総面積である。
居住に使える実面積はこれより狭い。
初日は、全員が十分な間隔を取って同時に横になれるとは限らない。
長期使用する場合は、
- 不要棚の撤去
- 機械と居住域の分離
- 資材の垂直収納
- 二段寝台
- 廃材間仕切り
- 通路幅の固定
が必要になる。
5-2. 到着時の環境
- 暑い
- じめじめしている
- 長期間使用されていない
- 錆、埃、古い油、カビ臭がある
- 一部照明と換気は停止している
- 機械、棚、資材が残っている
- 乾燥した床と湿った床が混在する
第4話は春先から初夏である。
日中は蒸し暑く、夜間は外壁側から冷えが入る。湿った寝具や衣服は乾きにくい。
5-3. 構造状態
主支柱そのものは、36名を収容できる程度には安定している。
応急補強が必要なのは、主に局部設備である。
- 配管支持材
- 天井ラック
- 扉枠
- 局部床
- 棚の転倒防止
- 途切れた通路端
- 換気ダクト支持部
主構造そのものが今にも座屈する状態にはしない。
それでは生活再建拠点として成立しないためである。
5-4. 日常監視
都市側の精密監視装置は使えないため、外壁民は現場式の監視を行う。
- 傷罫による亀裂進行確認
- 振り子による傾斜確認
- 透明管水準器による相対変位確認
- ワイヤー張力の変化
- ボルト位置のマーキング
- 打診音の比較
- 毎日の記録板
異常があれば、ヒナセが当該区画の使用を即時停止できる。
5-5. 通路と避難
出入口から居住域、作業域、排泄区域、退避方向までの通路幅は確保できる。
寝具、資材、容器を通路へ恒常的に置かない。
到着直後は、中央の転倒棚と散乱物によって、入口から奥までの通り抜けができない。
到着24時間後までに、F-03側主入口から旧B-19側の仮封鎖部まで、幅2mの中央避難・運搬通路を確保する。
第二避難路は、倉庫上側中央寄りの旧点検階段へ抜ける幅2mの経路として平面上へ置く。ただし、これは暫定案であり、階段の先の外部退避先と最終的な安全性は未確定である。
5-6. 二段階平面計画
平面計画は、同じ20m×10mの躯体を次の二時点で扱う。
| 時点 | 空間状態 | 就寝 | 避難動線 |
|---|---|---|---|
| 到着直後 | 棚、旧機械、廃材、濡れた床、内容不明容器が残る。人と荷物を退避させただけ | 全員同時就寝は不可 | 未確保。中央で転倒棚に遮断される |
| 到着24時間後 | 棚と廃材を移し、用途別の仮区画を形成 | 36名全員の仮寝床を確保 | 中央幅2mを確保。第二避難路は案の段階 |
厳密な区画座標、面積、収容人数、変化前後の対応は、独立資料『旧保安保守倉庫二段階平面図参照資料_v1.0』を正本とする。
6. 残置設備と持込物資
6-1. 倉庫に残っていた物
- 工具
- 部品
- 棚
- 机
- 寝具
- 容器
- 旧制服
- 年代物の標識
多くは錆び、埃や湿気の影響を受けている。
露出したまま15年間置かれた寝具は、原則として使用しない。密封状態が維持された物だけを清掃、乾燥、確認後に使う。
6-2. 再利用可能な物
- 錆を除けば非構造用途に使えるねじ
- 密封箱に残った未腐食部品
- 荷重を担わない棚、間仕切り用金具
- 清掃、補修可能な机と容器
- 分解して材料へ戻せる機械部品
錆びたねじや来歴不明の部品を、主構造の補強には使わない。
6-3. 危険物
内容不明の古い容器が残されている。
ただし、圧縮容器、蓄電池、洗浄溶剤、油脂、腐食物のどれが残っているかは未確定。
初動では、内容を推測して開封せず、居住域から隔離して表示を付ける。
危険物の具体的な中身は、本文または美術設計時に決める。
6-4. B-19から持ち込んだ物
- 到着時総量500Lの水
- 36名で約10日分の保存食
- 工具
- 修理部材
- 背負子
- 索道用滑車とワイヤー
- 衣類
- 寝具
- 生活容器
- 最低限の衛生用品
持ち出した物資は、倉庫到着後、共同体の共同所有として扱う。
元の所有者が優先権を主張する余地は残るが、生存に必要な水、食料、修理材は個人占有させない。
7. 水
7-1. 到着時水量
到着時の水は合計500L。
これは03-Hで回収した配管残水などを含む総量であり、500Lへさらに別枠の配管残水を足さない。
36名が1人1日3Lを飲料として使う場合、
[
500 \div (36 \times 3) = 4.63日
]
となる。
ただし、3Lはほぼ飲料だけである。
調理まで含めて1人平均3.5Lとすれば、
[
500 \div (36 \times 3.5) = 3.97日
]
である。
したがって、
飲料だけなら4日から5日。調理まで含めると4日目に危険域。
とする。
第4話の最初の緊急課題は水である。
7-2. 水の用途区分
水は次の三系統に分ける。
| 区分 | 用途 | 優先度 |
|---|---|---|
| 飲料用 | 直接飲用、服薬 | 最優先 |
| 調理用 | 食品加熱、最低限の器具洗浄 | 高 |
| 洗浄用 | 手洗い、清拭、清掃、洗濯 | 制限対象 |
飲料用を、身体洗浄や床洗浄へ無制限に使わない。
7-3. 継続水源
近隣の生きた淡水配管を調査し、廃止枝または保守枝から分岐する。
水源は継続利用可能である。
ただし、分岐した直後の水を無条件で飲用しない。
配管の滞留水、錆、微生物、修理時の汚染を想定する。
7-4. 浄水方式
水源は淡水であるため、淡水化プラントは設置しない。
設置するのは簡易浄水ユニットである。
基本工程は次の通り。
- 沈殿
- 粗濾過
- 活性炭処理
- 膜濾過
- 加熱または薬剤による最終消毒
- 飲料用容器へ密閉保管
具体的な日量、フィルター交換頻度、電力消費は未確定。
7-5. 担当
- ヒナセ:水源調査、配管分岐、漏水と圧力判断
- ミネ:配給基準、水台帳、飲料容器、衛生管理
- 成人作業班:重量容器の運搬、配管施工補助
- 年長の子ども:空容器、小型容器、記録札などの軽作業
子どもへ重量容器の運搬を恒常的に担わせない。
8. 食料と調理
8-1. 到着時備蓄
保存食は36名で約10日分。
主な内容は、保存性と熱量を優先した食品である。
具体的な品目構成は未確定。
4日目に尽きるのは食料ではなく、水の余裕である。
8-2. 管理と配給
ボルドがいる時期は、ボルドが物資全体を把握していた。
ボルド不在後は、ミネが台帳と必要量を管理し、共同体を分けた各班の班長を通じて配給する。
配給基準は、
- 年齢
- 作業量
- 負傷
- 高齢
- 体調
- 備蓄残量
を考慮する。
8-3. 調理
調理用熱源はある。
ただし、倉庫全体で自由に火を使わない。
換気を確保した工作室または調理区画の一角に限定し、
- 火気番
- 消火器
- 消火砂
- 可燃物との距離
- 退避通路
を確保する。
8-4. 次の調達
食料が尽きる前に、都市の非公式市場、闇市場、既存の取引相手から購入または交換する。
倉庫を取引場所にはしない。
9. 排泄・排水・衛生
9-1. 既設設備
倉庫には既設トイレがあるが、到着時には使用できない。
排水管も詰まり、破断、逆流、接続切れのいずれかにより使用できない。
ヒナセらは排水系統の復旧を進める。
9-2. 復旧前の排泄処理
鋼鉄主体の縦構造都市に、排泄物を埋める場所はない。
復旧前は、
- 密閉式乾式便器
- 交換式汚物容器
- 吸収材
- 消臭材
- 手洗い用の別容器
を使う。
汚物容器は居住域と調理域から離し、転倒防止と表示を行う。
排水系統復旧後、処理可能な系統へ接続して処理する。
9-3. 身体洗浄と洗濯
水が安定するまでは、短時間の部分洗浄を基本とする。
- 濡れ布による清拭
- 手、顔、傷周辺の優先洗浄
- 作業着の部分洗い
- 洗浄水の再利用範囲を限定
身体洗浄と着替えの空間は、廃材や布で男女別に分ける。
完全な個室ではないが、最低限の視線遮蔽を確保する。
9-4. ごみ
ごみは次のように分ける。
- 金属:再利用または交換資源
- 食品残渣:密閉保管
- 汚染布:別容器で隔離
- 紙・布:安全な排気設備のある炉でのみ焼却可能
- 容器:洗浄、再利用、危険物確認
ごみを無差別に燃やさない。
煙、臭い、廃熱は発見リスクにもなる。
9-5. 臭気、害虫、カビ
- 残置していた脱臭炭
- 乾燥剤
- 換気
- 寝具乾燥
- 食品密閉
- 湿った資材の隔離
- 毎日の清掃当番
で対応する。
衛生管理の中心はミネ。
10. 電力・照明・換気・温度
10-1. 電力
倉庫の系統近くまで電力は来ているが、旧配線は老朽化しており、そのまま通電できない。
到着直後は携帯灯、蓄電灯を使う。
ヒナセが、
- 絶縁状態
- 漏電
- 接地
- 過電流保護
- 不要枝の切離し
を確認した後、一部回路を復旧する。
廃止系統や非公式な電力使用は都市内に多数存在し、倉庫で少量使用しただけでは、倉庫固有の異常として直ちに検知されない。
ただし、無制限な大電力使用はしない。
10-2. 照明
復旧後は、残っていた蛍光灯と白熱灯の一部を使う。
用途別に、
- 通路灯
- 作業灯
- 排泄区域灯
- 夜間の低照度灯
へ分ける。
夜間も全面点灯し続けない。
10-3. 換気
旧換気設備は、停止していれば修理する。
居住地が人の多い現役区画から離れているため、通常の換気音だけで直ちに発見される可能性は低い。
ただし、
- 火気使用時
- 調理時
- 汚物容器交換時
- 溶接、塗装、溶剤使用時
は換気を必須とする。
10-4. 火災
- 消火器
- 消火砂
- 水以外の初期消火手段
- 火気番
- 可燃物隔離
- 通路確保
- 夜間見回り
を行う。
「火気を使っても問題がない」のではなく、使える条件を作って限定運用する。
11. 寝床と空間分け
11-1. 到着直後の配置
到着後、最初に乾燥している場所を選ぶ。
優先配置は次の通り。
- 子ども
- 高齢者
- 軽傷者
- 一般成人
これは人物価値の序列ではなく、湿気、冷え、転倒が身体へ与える影響の差による。
到着直後は、乾いた床28㎡へ、子ども15名、高齢者3名、軽傷者3名の計21名を優先収容する。
軽傷者を除く成人15名は、別の28㎡で座るか、交代で横になる。
- 成人女性9名
- 成人男性6名
水500L、保存食10日分、寝具、工具は荷ほどき前のまま仮置きされる。
中央には転倒棚、廃配管、ケーブル束が残り、全員が同時に眠ることも、主入口から奥まで通り抜けることもできない。
11-2. 到着24時間後の配置
到着24時間後までに、全員分の仮寝床と中央幅2mの避難・運搬通路を確保する。
就寝・休養配置は次の通り。
| 区画 | 人数 | 面積 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 子ども寝床 | 15名 | 24㎡ | 乾燥側を優先 |
| 休養域 | 6名 | 16㎡ | 高齢者3名+軽傷者3名。軽傷者は男2・女1 |
| 成人女性寝床 | 9名 | 20㎡ | 女性10名のうち軽傷者1名は休養域 |
| 成人男性寝床 | 6名 | 16㎡ | 男性8名のうち軽傷者2名は休養域 |
| 合計 | 36名 | 76㎡ | 仮寝床であり、長期居住の完成形ではない |
生活区画として、見張り・出入記録、水容器・浄水準備、調理・食料、配給・食事・合議、工作・電力点検、危険物隔離、乾式便所・清拭を分ける。
到着24時間後も、新しい淡水配管からの分岐は完成していない。水500Lを容器別に整理し、台帳化し、水源調査へ着手した段階である。
11-3. 間仕切り
廃材、棚、布、旧制服、梱包材を使って、
- 就寝域
- 調理域
- 排泄域
- 作業域
- 危険物隔離域
- 子ども、高齢者、負傷者の休養域
を分ける。
間仕切りはプライバシーだけでなく、衛生、音、火気、工具、通路を分離するために使う。
11-4. 長期化した場合
- 二段寝台
- 寝具の番号管理
- 乾燥当番
- 居住区と工具区の明確な分離
- 夜間静穏時間
- 個人物資の小型収納
を整える。
倉庫は当座の居場所であり、問題がなければ長期的な仮住居へ発展し得る。
ただし、共同体は倉庫そのものへ固執しない。
12. ボルド不在後の運営
12-1. 基本構造
重大事項は、成人の班長を中心とした合議で決める。
ただし、緊急事態まで合議を待つと被害が広がるため、分野別の即時判断権を置く。
| 人物・集団 | 担当 | 即時判断権 |
|---|---|---|
| ヒナセ | 設備、配管、電気、構造危険、移動経路、現場作業、外部での技術交渉 | 危険区画、設備、作業の即時停止 |
| ミネ | 水・食料台帳、配給、衛生、寝床、子ども、高齢者、看護、取引相手との連絡 | 汚染物隔離、配給制限、衛生上の使用停止 |
| 成人作業班 | 見張り、重量運搬、補強、消火、設備作業補助 | 差し迫った危険時の退避誘導 |
| 班長会議 | 移転、配給基準、外部取引、ボルド確認など | 原則として合議 |
緊急停止後の継続方針は、班長会議で確認する。
12-2. 役割分担
ヒナセ
- 設備点検
- 修理
- 水源調査
- 配管分岐
- 電力復旧
- 構造危険判断
- 移動経路確認
- 外部での技術交渉
- 現場作業の可否判断
ミネ
- 配給
- 水、食料、物資台帳
- 衛生
- 寝床
- 子ども、高齢者、負傷者
- 看護
- 事務
- 取引相手の選定
- 必要物資と交換条件の整理
- 闇市場との連絡
成人
- 見張り
- 重量運搬
- 補強
- 火気管理
- 清掃
- 外出者の帰還確認
子ども
- 小型容器
- 空容器
- 記録札
- 軽い清掃
- 年少者同士の見守り
子どもを安価な重労働力として扱わない。
12-3. ヒナセへの反発
ヒナセは19歳であり、ボルドの代わりとして全員から無条件に認められるわけではない。
- 若すぎる
- 判断が早すぎる
- ボルドほど経験がない
- 技術はあっても生活全体を見られるのか
という不安や反発がある。
ヒナセは肩書で従わせるのではなく、危険を見抜き、優先順位を付け、実際に配管や設備を動かすことで信頼を獲得していく。
13. ボルドを探しに行かない理由
13-1. 共同体が知っていること
全員が、ボルドが連行時点では生きていたことを知っている。
共同体側からは、保護より拘束に見えている。
その後、
- 生きているか
- どこへ移されたか
- どのような処遇を受けているか
は分からない。
13-2. ヒナセの判断
ヒナセはボルドを迎えに行きたい。
03-Vの「後で迎えに行くからな」という意思は撤回していない。
しかし、倉庫では、
- 水源確保
- 設備復旧
- 排泄処理
- 避難経路の安全確認
が急務である。
これらを担うヒナセまで消えれば、36名の生活再建そのものが止まる。
ヒナセは、ボルドを見捨てたのではない。
迎えに行くためにも、まず36人を死なせない。
と実行順序を変える。
13-3. 探しに出られる条件
ヒナセが一時的に倉庫を離れられる条件は次の三つ。
- 水が継続供給される
- 排泄設備と避難経路が使用できる
- ヒナセ不在時に設備判断を代行できる者を一人育てる
条件を満たした後、ボルドの所在確認へ動くつもりでいる。
14. 都市制度との関係
14-1. 台帳上の立場
36名は都市台帳上、未登録者である。
そのため、通常は、
- 公的配給
- 基礎医療
- 正規昇降
- 公的住居
- 第八仮設避難所への正式収容
- 就労登録
を利用できない。
14-2. 共同体の方針
共同体として望むのは完全な潜伏。
- 倉庫の存在を都市へ知らせない
- 正式な公認を求めない
- 子どもや高齢者だけを通常時に登録へ出さない
- 必要な取引だけを限定的に行う
ただし、生命危機にある個人まで理念のために抱え込むとは限らない。
重病、重大外傷など共同体では救命できない場合、一時保護へ送り出す余地はある。
これは正式登録を目指す方針ではなく、救命上の例外である。
14-3. 発見された場合
都市側に発見された場合、直ちに正式住民として保護される可能性は低い。
想定される順序は、
- 生命危険の確認と一時保護
- 身元、施設占有、設備利用の確認
- 拘束または監視下への移行
- 未登録設備、盗用資源、移動経路の調査
である。
共同体が潜伏を選ぶ理由は、単なる反抗心ではない。
発見された時点で、生活拠点、移動の自由、共同体の一体性を失う可能性があるためである。
15. 仕事・外部取引・物資調達
15-1. 提供できるもの
共同体が外部へ提供できる対価は次の通り。
- 保守作業
- 修理
- 廃部品
- 輸送
- 索道運用
- 外壁移動
- 設備情報
- 応急補修
15-2. 受け取るもの
- 局票
- 食料
- 薬
- 部品
- 浄水資材
- 衛生用品
- 信用
- 労働交換
外壁経済では、局票だけでなく、現物、労働、将来の借り、約束を守った実績が価値を持つ。
15-3. 役割分担
ミネ
- 取引相手を選ぶ
- 連絡を取る
- 必要物資を整理する
- 交換条件を決める
- 相手の信用を判断する
ヒナセ
- 中継地点へ出る
- 技術内容を説明する
- 作業可否を判断する
- 現場作業を行う
- 交換対象の品質を確認する
15-4. 取引場所
倉庫は居住地として秘匿する。
取引は、倉庫から離れた、
- 廃市場
- 保守デッキ
- 中継通路
などで行う。
具体的な中継地点の固有名は未確定。
取引相手を倉庫まで案内しない。
15-5. 発見リスク
外部と取引する以上、発見リスクをゼロにはできない。
倉庫を隠したまま生活物資を得ることは、この共同体が長期的に抱える構造的な弱点である。
この弱点は便利な偽装設定で完全解決しない。
16. 共同体内部の対立
16-1. 基本状態
- 公的避難所へ移りたい者はいない
- 倉庫そのものへ永住したいという強い執着もない
- ボルドの救出または所在確認を優先したい者はいる
- ヒナセの若さへ不安を持つ者がいる
- 水、食料、寝床、仕事の分配を巡る不満が起きる
- 持ち出した生存物資は共同所有となる
16-2. 最初に結束を揺らすもの
最初に共同体の結束を揺らすのは水不足。
水は、
- 全員が毎日必要とする
- 備蓄の減少が数字で見える
- 作業量と配給量の関係が生まれる
- 子ども、高齢者、負傷者への優先が必要になる
- 調理、衛生、飲料が競合する
ため、共同体の公平性を最初に試す資源になる。
16-3. 倉庫への帰属
倉庫は大切な拠点だが、故郷そのものではない。
共同体が守るのは建物より、
- 人
- 工具
- 技能
- 物資
- 信用関係
である。
倉庫を失う可能性は将来も残る。
必要なら、再び生活を持ち運ぶ。
17. 生活再建の段階
以下は作業順の目安であり、全工程が第4話内で完了することを意味しない。
第1段階 到着から24時間
- 人数確認
- 軽傷者確認
- 成人内訳を男性8名、女性10名として記録する
- 軽傷者を男性2名、女性1名として休養域へ移す
- 主構造と局部危険の確認
- B-19側端部の仮封鎖
- 中央の転倒棚と廃材を除去する
- F-03側主入口から奥へ通じる幅2mの避難・運搬通路を確保する
- 水500Lと食料10日分の台帳化
- 乾燥した寝床を、子ども15名、休養者6名、成人女性9名、成人男性6名へ配分する
- 密閉式乾式便器の設置
- 携帯灯による通路照明
- 見張りと班分け
- 水源候補の調査開始
第2段階 2日目から4日目
- 生きた淡水配管の特定
- 分岐施工
- 簡易浄水ユニットの仮設
- 排水管の調査と部分復旧
- 旧電力系統の安全確認
- 換気設備の一部復旧
- 寝床と作業域の分離
第3段階 5日目以降
- 食料、薬、衛生用品の外部調達
- 倉庫外の中継地点で取引開始
- 修理、輸送、保守作業を対価化
- 二段寝台と収納の整備
- ヒナセ不在時の設備担当育成
第4段階 中長期
- 当座の避難場所から仮住居へ移行
- 外壁民の作業、修理、物資交換の拠点へ発展
- 住居と取引場所を分離したまま維持
- 必要なら別拠点へ再移動
- 都市側への正式公認は求めない
18. 第4話におけるヒナセの場面
18-1. 描く範囲
第4話では、生活再建を完成させない。
描くのは、
課題だらけの状況を前に、ヒナセが対処しようと動き始めるところまで。
である。
場面番号と題名は未確定。
18-2. 開始状態
- ボルドは戻っていない
- 一部の者はまだ彼を待っている
- 水は500Lしかない
- 既設トイレと排水は使えない
- 電力と換気は停止または危険
- 寝床は狭く湿っている
- 軽傷者がいる
- 子どもと高齢者を乾燥した場所へ移す必要がある
- 倉庫を見つけられてはいけない
問題は一つずつではなく、同時に存在する。
18-3. 推奨する場面進行
- ヒナセが一つの設備を確認しようとする
- 別の人物から、寝床、排泄、照明、負傷、ボルドの問題を次々に持ち込まれる
- ミネが生活側の問題と物資残量を整理して伝える
- ボルドを探すべきだという声が出る
- ヒナセは、全部を同時には直せないと理解する
- 最優先を水と決める
- 配管図、打診、旧経路の確認を始める
終了時点で水はまだ確保できていない。
ただし、共同体は初めてボルド抜きで動き始めている。
18-4. ヒナセの中心変化
開始
ボルドが戻れば、次を決められる。
終了
ボルドが戻るまで、36人の生活を止めるわけにはいかない。
中心変化は、技術的な水確保の成功ではない。
ボルドを待つ側から、ボルドなしで共同体を動かす側へ変わる。
ことである。
18-5. 今回描かないもの
- 数週間後までの完成形
- 浄水設備の完全稼働
- 取引拠点化
- ボルド捜索の実行
- 都市側との再接触
- 倉庫の長期安定
これらは後続話数へ残す。
19. 第八仮設避難所との詳細対比
| 論点 | 第八仮設避難所 | 旧保安・保守倉庫 |
|---|---|---|
| 人数 | 第4話朝88名 | 到着時36名 |
| 選ばれ方 | 納税、登録、公共貢献などを基準に都市から選別 | 都市の選別外。自力避難 |
| 制度上の立場 | 公的な避難民 | 未登録、潜伏中 |
| 施設 | 物流倉庫を非常収容施設へ転用 | 廃止された保安・保守倉庫を自力で再稼働 |
| 管理 | 選別局と避難所運営側 | 共同体の合議と分野別担当 |
| 安全 | 最低限の公的監督がある | 自分たちの点検と補修が失敗すれば事故になる |
| 水 | 飲料水は外部から届くが、時刻と量を選べない | 500Lしかなく、継続水源を自力で探す |
| 水道 | 既設水道は赤錆で飲用不可 | 近隣淡水配管から分岐し、自作浄水を行う |
| 排泄 | 仮設トイレはあるが不足し、長い列ができる | 到着時は何も使えず、乾式便器と汚物容器から始める |
| 食料 | 配給に依存 | 10日分の共同備蓄と外部取引 |
| 寝床 | 床、毛布不足、湿気、配置は運営と避難民同士の調整 | 廃材を除き、乾燥域を選び、自分たちで間仕切る |
| 医療 | 対応意思と記録はあるが、医療巡回や搬送を待つ | ミネの看護と応急処置のみ。重症には対応できない |
| 仕事 | 失った仕事の代替を都市へ求める | 持ち出した技能を直ちに生活再建と取引へ使う |
| 道具 | 工具を失い、返却や支給を求める者がいる | 工具そのものを持ち出し、共同体資源として使う |
| 将来 | 住宅、仕事、登録の回答を制度へ求める | 正式公認を求めず、当座の居場所を自分たちで作る |
| 不満の向き | 制度、都市、窓口の悠人へ向かう | 配給、優先順位、ヒナセの判断など共同体内部へ向かう |
| 自由 | 生存保障はあるが、生活条件を決めにくい | 自己決定できるが、生存保障がない |
| 最大の弱点 | 対応意思より資源と権限が足りない | 技能があっても資源、医療、秘匿性に限界がある |
| 人物劇 | 悠人が「命を救う」と「人生を救う」の違いを知る | ヒナセが「生き残る」から「生活を回す」へ進む |
19-1. 対比の本質
第八避難所は、都市が人を救命した後の限界を描く。
旧保安・保守倉庫は、都市に救命されなかった人々が生活を作る代償を描く。
どちらか一方が正しいわけではない。
第八避難所
命は制度に守られている。
しかし、人生の再建を制度へ要求しても、すぐには返ってこない。
旧保安・保守倉庫
人生の決め方は自分たちにある。
しかし、命を守る設備まで自分たちで作らなければならない。
この対比によって、第4話は、同じB-19喪失後にも複数の「生き残り方」があることを描ける。
20. 制作上の禁止方向
20-1. 倉庫を理想郷にしない
自由はあるが、水、医療、衛生、発見リスク、内部対立がある。
20-2. 第八避難所を単純な収容所にしない
都市側には救命意思があり、職員も働いている。資源と時間が追いつかない。
20-3. ヒナセを万能な若き天才にしない
ヒナセは設備に強いが、配給、看護、育児、交渉相手の信用判断まで一人では担えない。ミネと共同体が必要。
20-4. 合議制を無制限に美化しない
合議には時間がかかり、緊急設備判断には向かない。分野別の即時停止権が必要。
20-5. 秘匿を絶対化しない
通常は見つかりにくいが、追跡、資源使用、古い記録の照合によって発見され得る。
20-6. 子どもへ重労働を担わせない
子どもの役割は軽作業と共同生活参加の範囲にする。
20-7. 排泄物を埋めない
縦構造都市に埋設場所はない。乾式便器、密閉容器、排水復旧で処理する。
20-8. 淡水を淡水化しない
近隣水源は淡水配管。必要なのは簡易浄水であり、淡水化ではない。
20-9. ボルドを忘れない
ヒナセが探しに行かないのは諦めたからではない。36名を先に生かすための延期である。
21. 旧案・矛盾解消履歴
| 旧状態 | v1.1での整理 |
|---|---|
| 避難人数30名 | 03-D時点は30名。移動中に6名合流し、到着時36名 |
| 男6、女9、子15、高齢者3で合計33名 | 成人男性8、成人女性10、子ども15、高齢者3で合計36名 |
| 軽傷者3名を人数へ加算 | 軽傷者3名は成人18名の内数。男性2、女性1 |
| 倉庫の内部配置が未確定 | 20m×10mの暫定平面を採用し、到着直後と24時間後の二段階配置を定義 |
| 到着時から200㎡を全面使用できる | 到着直後は棚、機械、廃材、湿潤床で使用面積が限られ、全員同時就寝と貫通避難ができない |
| 500Lに配管残水を別途加算 | 500Lが配管残水を含む到着時総量 |
| 食料10日分だが4日目に物資が尽きる | 4日目に危険域へ入るのは水。食料は約10日分 |
| 淡水化プラント | 淡水配管から分岐し、簡易浄水ユニットを使用 |
| 昇降路を使っても記録が一切残らない | F-03利用記録は残る。倉庫までの移動は記録されない |
| ヒナセはボルドを探しに行かない | 今は行かない。生活が回り、代理担当ができた後に探す |
| 倉庫を取引拠点にする | 倉庫は秘匿し、取引は別の中継地点で行う |
| 排泄物を埋める | 密閉式乾式便器と汚物容器。排水復旧後に処理 |
| 倉庫記録が完全消滅 | 現行台帳から外れているが、旧記録と構造情報は断片的に残る |
| 絶対に発見されない | 通常調査では発見されにくいが、意図的調査なら発見可能 |
旧案を後続資料へ再導入しない。
22. v1.2以降で決める細部
以下は、生活再建設定の成立を妨げない未確定事項。
- 移動途中で合流した6名の年齢区分と経緯
- 倉庫の実測に相当する柱、壁厚、扉幅、天井高
- 第二避難路の旧点検階段が接続する外部退避先と安全性
- 簡易浄水ユニットの日量、消費電力、フィルター交換周期
- 古い危険容器の具体的内容
- ヒナセ不在時の設備代理者
- 取引相手と中継地点の固有名
- 第4話内のシーン番号、題名、正確な開始時刻
- 倉庫を失う具体的な将来展開
23. AI再読込用要約
23-1. 必須前提
- B-19地区は第3話で制御落下し、黒海へ沈んだ
- 03-D時点の避難予定者は30名
- 移動途中で6名が合流し、旧保安・保守倉庫への到着人数は36名
- 36名は成人男性8名、成人女性10名、子ども15名、高齢者3名
- 軽傷者3名は成人18名の内数で、男性2名、女性1名
- 36名は都市台帳上の未登録者
- 倉庫はB-19本体ではなく、保持側の独立支柱系統に残っている
- 倉庫は約15年前に廃止された旧保安・保守倉庫
- 現行台帳と地図から外れているが、旧記録は断片的に残る
- F-03公式非常乗降場、保守デッキ、旧手動防火扉、廃止保守通路を経て倉庫へ入る
- 昇降記録にはF-03利用だけが残る
- 倉庫の暫定平面は20m×10m、約200㎡
- 平面左側中央がF-03方面の主入口、右側中央が旧B-19側通路
- 到着直後は棚、機械、廃材、湿潤床が残り、全員同時就寝と貫通避難はできない
- 到着24時間後には中央幅2mの避難・運搬通路と36名全員の仮寝床を確保する
- 24時間後の仮寝床は、子ども15名、休養域6名、成人女性9名、成人男性6名
- 旧点検階段へ抜ける第二避難路は暫定案で、外部接続先は未確定
- 到着時の水は総量500L。調理込みで4日目に危険域
- 食料は約10日分
- 近隣の生きた淡水配管から分岐し、簡易浄水ユニットを設置する
- 既設トイレと排水は使えず、当初は密閉式乾式便器と汚物容器を使う
- ヒナセは設備、配管、電気、構造危険、移動経路を担当
- ミネは配給、衛生、寝床、子ども、高齢者、看護、台帳、取引連絡を担当
- 重大判断は合議だが、ヒナセとミネには分野別の即時停止権がある
- 倉庫は居住地として秘匿し、取引は別の中継地点で行う
- ボルドは都市側に連行されており、倉庫の場所を話さない
- ヒナセはボルドを迎えに行きたいが、生活再建が安定するまでは行かない
- 共同体は都市側への正式公認を求めず、完全潜伏を基本方針とする
23-2. 第4話で描く中心
第4話では、課題を解決し切らない。
水不足、壊れた設備、使えない排水、狭い寝床、軽傷者、ボルド不在への不安が同時に存在する。
ヒナセは全問題を一度に解決できないと理解し、最優先を水に定めて動き始める。
中心変化は、
ボルドを待つ側から、ボルドなしで36名の生活を動かす側へ変わること。
である。
23-3. 第八避難所との核心対比
第八仮設避難所
- 都市に選ばれた88名
- 命は公的に保護される
- 水と物資は届く
- 自分で時刻、量、住居、仕事を決められない
- 悠人は「命を救うこと」と「人生を救うこと」の違いを知る
旧保安・保守倉庫
- 都市に選ばれなかった36名
- 公的な生存保障はない
- 水と設備を自分たちで作る
- 配り方、働き方、移転を自分たちで決める
- ヒナセは「生き残ること」から「生活を回すこと」へ進む
23-4. 絶対に変更しない条件
- 倉庫を理想郷にしない
- 第八避難所を悪意ある収容所にしない
- ヒナセ一人で全問題を解決させない
- ボルド捜索を断念させない
- 倉庫で直接外部取引をしない
- 排泄物を埋めない
- 淡水化プラントに戻さない
- 倉庫を絶対不可視の場所にしない
- 第4話内で数週間分の生活再建を完了させない
24. 参照資料
- 『統合管理シート_第3話「落下」』
- 『統合管理シート_第4話「消化」(仮)』
- 『生活設定資料_Version_1.1』
- 『第八仮設避難所・避難民受入後設定資料_v1.0』
- 『旧保安保守倉庫二段階平面図参照資料_v1.0』
- 『旧保安保守倉庫_二段階平面図_v1.0』
- 『選別局・昇降局合同事後報告書』
- 『外壁民応急工学ガイドライン_Ver.1.0』
- 『外壁民避難誘導ガイドライン_v1.0』
25. 核心
第八避難所の88名は、都市に選ばれた。
しかし、選ばれた後の人生を自分では決められない。
旧保安・保守倉庫の36名は、都市に選ばれなかった。
そのため、水も、寝床も、排泄設備も、自分たちで作らなければならない。
一方は、保障されるが決められない。
もう一方は、決められるが保障されない。
どちらも救済ではない。
どちらも、生き残った後に始まる生活である。
旧保安・保守倉庫が象徴するものは、完成した新天地ではない。
再出発。
0からのスタート。
ヒナセは、失った場所の代わりをすぐに作れるわけではない。
それでも、水の流れを探し、管をつなぎ、36名の生活を動かし始める。