『バベル:リビルド』生活設定資料 Version 2.1

0. 文書目的

本資料は、主要人物の私生活、生活習慣、対人距離、金銭感覚、居住環境、季節対応、災害時行動を統合した生活設定資料である。

本作の私生活描写は、単なる休息や趣味の紹介ではない。

  • どこで眠るか
  • 何を食べるか
  • 誰と過ごすか
  • 何に局票を使うか
  • 誰を部屋へ入れるか
  • 災害時に何を持ち出すか
  • 何を失うと生活が崩れるか

これらを通じて、人物の性格、所属組織、社会階層、過去、都市との接続度を表現する。


第1部 バベルの生活基盤

1. 居住

1-1. 都市職員住宅

昇降局、選別局、昇降局保安群などの職員は、職員居住区または職務宿舎に住む。

元は規格化された宿舎群だが、長年の補修と増改築により、露出配管、後付け配線、不揃いな扉、薄い壁、共用洗濯設備、共用浴場、廊下へ張り出した私物や資材が混在する。

完全なスラムではない。旧規格構造は残っており、その上へ補修と生活が堆積している。

標準共同宿舎は職務配給。個室、広い部屋、安定した給湯、良好な昇降アクセスには追加負担がある。

主要人物は夜勤、非常招集、専門性、機密、保安待機、若年保護などの理由で個室を使う。

標準宿舎の入浴設備は男女別の共用浴場である。

ただし、夜勤、緊急出動、汚染作業など勤務直後の衛生処理を必要とする一部職員用個室には、狭い簡易シャワーが設置される。簡易シャワーは短時間の身体洗浄用で、給湯量または連続使用時間に制限がある。浴槽、広い洗い場、安定した大量給湯は共用浴場が担う。洗濯は個室設備化せず、引き続き共用洗濯設備を使用する。

1-2. 外壁居住

外壁民は生活と作業場の境界が薄い。

  • 薄板や布による間仕切り
  • 共同寝床
  • 共同収納
  • 工具と寝具が近い
  • 配管熱を利用した暖房
  • 作業班・家族・共同体単位の場所取り
  • 換気、漏水、腐食、風圧への不断の対応

B-19脱出後は、ボルドがかつて使用していた旧保安・保守倉庫を一時避難先とする。最初に出入口、換気、給水、排水、電力、発見リスク、乾燥した寝床、子どもと負傷者の位置を確認する。

2. 季節・温度・湿度

  • 季節は存在する
  • 上層ほど寒い
  • 外壁は寒暖差が大きい
  • 暖房は温まりにくい
  • 冷房は冷えにくい
  • 都市内は湿気が強い
  • 機械区画は季節を問わず暑い
  • 冬はコート必須
  • 夏は袖捲り、胸元を開ける、作業着をはだける描写が増える

第4話は春先から初夏。

  • 朝晩は冷える
  • 日中は蒸し暑い
  • 外壁は日射で熱くなる
  • 夜は急に冷える
  • 上着を持て余す
  • 汗と湿気が残る
  • 寝具を薄くし始める

寝具の季節差

春先は毛布と薄い掛布。初夏は通気性のある寝具。冬は毛布を重ね、配管熱側へ寝床を寄せる。外壁ではコートを掛布代わりにすることもある。

3. 金銭・配給・局票

3-1. 局票

局票は金属本位の貨幣ではない。昇降、水、熱、電力、配給、医療、居住、公共修理、登録市場が局票を受け取ることで信用が成立する。

局票の本質は都市機能への請求権である。

3-2. 配給と給料

配給で保障されるもの:

  • 最低限の食料・飲料水
  • 標準宿舎
  • 最低限の電力・熱
  • 基礎医療
  • 業務用衣服
  • 業務上必要な昇降
  • 最低限の生活用品

局票で得るもの:

  • 嗜好品、追加食料、肉、酒、甘味
  • 良質な衣服
  • 個人用工具
  • 娯楽
  • 追加給湯・追加電力
  • 広い部屋・個室
  • 非緊急医療
  • 優先昇降
  • 修理、仕立て、理髪などの個人サービス

給料は、生存を買う金というより、生活へ選択肢を足す余剰である。

3-3. 外壁経済

外壁では局票、現物交換、信用取引、労働返済、共同体単位の借りが併用される。

価値を持つものは食料、水、薬、布、燃料、部品、工具、防腐材、電力、労働、銅線、軸受、シール材、浄水フィルターなど。

最も重要なのは、誰が約束を履行するかという信用。

3-4. 納税と救護優先

納税は都市循環への負担返還であり、都市との相互扶助契約に近い。

救護優先は二段階。

第一段階:救命上の優先

  • 医療緊急度
  • 年齢
  • 自力避難困難
  • 妊娠
  • 災害対応要員
  • 搬送可能性
  • 今救わなければ死ぬか

第二段階:同条件内の制度優先

  • 住民登録
  • 納付履歴
  • 公共貢献
  • 扶養関係
  • 受入先
  • 維持技能
  • 居住権
  • 災害対応実績

3-5. 非公式な賄賂

制度運用には賄賂が入りうる。

  • 緊急度の書き換え
  • 搬送名簿への追加
  • 仮住民登録
  • 空きベッド確保
  • 輸送便への割込み
  • 技能保持者登録
  • 扶養関係の偽装
  • 他人の貢献履歴への紐付け

対価は局票だけでなく、部品、薬、酒、食料、修理、通行許可、就職口、将来の借りでも成立する。


第2部 共通生活文化

4. 食事

バベルでは栄養バランスより、カロリー、塩分、脂肪、保存性、調理負担の低さを優先する。

  • レイカ:肉、塩気の強い汁物、麺、揚げ物。苦い野菜は残すことがある
  • セナ:温かい肉料理、濃い味、塩気
  • カイ:肉、脂、塩、辛味、ジャンク
  • 悠人:配給食、避難所食、余り物。自分の食事は後回し
  • ナギ:酒、燻製肉、乾燥肉、塩豆、発酵食品、硬いチーズ
  • ボルド:強い酒を少量、乾燥肉、硬いパン
  • ヒナセ:肉で露骨に喜ぶ。串焼き、ソーセージ、脂のある煮込み、塩味の麺
  • 澪:麺、パン、粥、芋、穀物、栄養ペースト。炭水化物中心
  • 真琴:強い甘味。甘いコーヒー、砂糖菓子、保存菓子、甘いバー

5. 入浴・衛生・洗濯

日常の基本は短時間シャワー。濡れ布、蒸しタオル、部分洗浄、消毒・消臭も使う。

  • 日常の短時間シャワーは、共用浴場のシャワー設備または勤務特性に応じて設置された個室簡易シャワーを使う。
  • 個室簡易シャワーの対象は、夜勤、緊急出動、汚染作業などに対応する一部職員。
  • 個室簡易シャワーは快適性ではなく、勤務直後の衛生処理と緊急待機の継続を目的とする。
  • 湯船、広い洗い場、安定した大量給湯は共用浴場が担う。
  • 洗濯は共用設備を使用する。

共同浴場は廃熱利用、循環濾過、露出配管、金属・コンクリート槽を持つ工場浴場に近い。

  • ナギ:浴槽に浸かるのが好き
  • 真琴:浸かるのは好きだが頻度が低い
  • ヒナセ:流れる水と水圧を好む
  • ボルド:油、爪、髭、古傷を洗う
  • セナ:勤務後すぐ。事件後は洗いすぎることがある
  • カイ:短時間
  • 悠人:順番を譲り、部分洗浄で済ませることがある
  • 澪:工程負担で飛ばし、翌朝補う
  • レイカ:定時入浴。髪を乾かしながら寝落ちすることがある

洗濯は共用大型洗濯機、脱水装置、乾燥室、作業着洗浄槽を使う。

  • 澪:まとめ洗い
  • セナ:柔らかい衣類を弱洗い
  • カイ:全部まとめて洗う
  • レイカ:分類する
  • ナギ:機械に忘れる
  • 悠人:着る物が尽きてから洗う
  • 真琴:制服洗浄サービス
  • ヒナセ:ミネの共同管理
  • ボルド:工業洗浄

6. 休日

都市職員はシフト制。同一職務者は同時に休まず、緊急呼出しもある。休日は次の勤務を維持するための休養。

外壁民の休日は制度ではなく作業の空白。仕事、資材、天候、設備状況で発生し、故障が起きれば消える。

7. 通信

7-1. 基本思想

バベルの通信は、一つの万能端末へ統合されていない。

データは新しいが、声は古い。危険な場所ほど、通信手段は単純で頑丈なものへ戻る。

都市には高度なデータ通信、HUD、位置情報、通信ログが存在する一方、蒸気、粉塵、厚い金属壁、電磁ノイズ、停電、違法増築が混在する現場では、旧式の業務無線が現在も標準装備として使用される。

通信手段と表示装置を混同しない。HUDは通信機ではなく、通信網・業務端末・設備から受け取った情報を表示するインターフェースである。

7-2. 通信関連カテゴリ【確定】

通信関連設備は、次のカテゴリへ分ける。

  1. 業務無線
  2. 業務端末
  3. 私用端末
  4. 固定通信
  5. 簡易HUD
  6. フルHUD
  7. 外壁非公式通信網
  8. 制圧フレーム搭載通信系

簡易HUD・フルHUDは表示装置であり、通信回線そのものではない。

7-3. 業務無線【確定】

現場用の標準装備。第2話02-Cで使用された構成を正本仕様とする。

標準構成:

  • 携帯型業務無線機本体
  • 肩マイク
  • PTT方式
  • 骨伝導イヤーピース
  • 肩マイク内蔵スピーカー
  • 交換式バッテリー
  • 短距離の直接通信機能
  • 都市中継網への接続機能

通常は骨伝導イヤーピースで受信する。イヤーピース破損時、複数人で聞く必要がある場合、負傷者等へ無線機を渡す場合には肩マイク内蔵スピーカーを使用できる。

ヘルメット装着時も使用可能。骨伝導部は耳前方からこめかみ付近へ接触させ、肩マイクは肩帯または胸元へ固定する。

業務無線が現場で残る理由は、低帯域音声に特化し、消費電力が小さく、頑丈で、都市中継網が失われても近距離直接通信を維持できるためである。

7-4. 業務端末と私用端末【確定】

都市職員は、セキュリティ上の理由から原則として完全な二台持ちとする。

業務端末

所属局から貸与され、職員IDと紐付く。

主用途:

  • 業務メッセージ
  • 図面
  • 地図
  • 住民・設備情報
  • 作業記録
  • 権限申請
  • 業務写真
  • 認証
  • 無線チャンネル設定
  • 作業票・監査資料

所属局によるログ管理、利用権限制御、遠隔失効が可能。

私用端末

個人所有。

主用途:

  • 私的音声通話
  • テキスト
  • 音声メッセージ
  • 写真
  • 娯楽
  • 私用決済

業務情報を私用端末へ転送することは原則禁止。

7-5. 通信網の階層【確定】

近距離班内通信

現場の業務無線同士による直接通信。都市中継網が停止しても、近距離であれば通信可能。

局内通信

選別局、昇降局、昇降局保安群など、各局内部の業務通信網。

都市幹線通信

都市各層と各局を接続する基幹通信網。管制、行政、医療、災害対応、設備情報等を運ぶ。

私用通信網

一般住民向けの音声、テキスト、音声メッセージ、私用データ通信を扱う。

外壁非公式網

廃止設備、再利用アンテナ、私設中継器、継ぎ足した有線などによって外壁側が独自に構築した通信網。

7-6. 通信不能の段階【確定】

通信障害を一種類で扱わない。

段階1:データ通信障害

データ通信不可、音声通信可。

図面更新、映像、大容量情報は届かないが、業務無線による会話は可能。

段階2:都市中継断

都市側の管制・遠隔部署とは通信できないが、現場班内の直接無線は可能。

段階3:音声通信断

業務無線も成立しない。事前手順、時刻同期、手信号、物理標識、紙図面、帰路マーカー等へ移行する。

段階4:完全孤立

通信、位置情報更新、外部データ更新がない。現場が保持している情報だけで判断し、帰還しなければならない。

7-7. 災害時の通信優先【確定】

設備制御・保護信号を一般通信と同じ帯域優先順位へ置かない。

独立最優先系

  • 設備制御
  • 非常停止
  • 保護信号
  • 重要センサーデータ

これらは原則として固定有線系を中心に、一般通信とは分離された経路を使用する。

人間向け通信の優先順位

  1. 緊急指揮・緊急音声
  2. 救護・搬送通信
  3. 災害対応業務データ
  4. 通常業務通信
  5. 一般音声
  6. 私用メッセージ
  7. 映像・大容量通信

災害時には、一般通信の一部を制限して緊急系へ帯域を回すことがある。

7-8. 固定通信【確定】

バベルでは有線通信が都市通信の基礎として残っている。

有線は都市の骨格、無線は動く人間をつなぐもの。

重要施設ほど固定有線系を信用する。

  • 管制室:冗長化された固定通信・データ線が主系統
  • 機械室:設備制御線、保守データ端子、固定通話設備
  • 昇降設備:通常の設備制御は固定系を基本とし、無線を補助・非常用に使用
  • 避難所:転用元施設の固定回線に必要に応じ仮設線を追加
  • 医療施設:固定通信を優先し、災害時も維持対象
  • 宿舎・一般居住区:私用通信網へ接続する固定設備が残る

外壁にも廃止された有線設備が多数残っており、外壁民が独自に復旧・継ぎ足して使う場合がある。

7-9. HUD【確定】

HUDは通信機ではなく表示装置。

携帯型簡易HUD

業務端末等から、地図、警告、少量の作業情報、通信映像等を表示する。

卓上型簡易HUD

図面、人員配置、簡易解析等を複数人で共有する。現場事務所、中間指揮所、保守拠点等で使用。

壁面共有表示

避難所、機械室、作業拠点等の共有情報表示。

管制室フルHUD

都市断面、構造、人口、昇降、流量、設備状態、予測解析等を統合して扱う。選別局・昇降局等の固定管制環境で使用する。

7-10. 制圧フレーム搭載通信系【確定】

現場用高機能通信ノード。機体間通信、管制通信、センサーデータ伝送を行い、簡易HUDを表示インターフェースとして使用する。

制圧フレームは大容量電源、通信機、アンテナ、センサー、表示装置を持つため、通常の携帯無線より高機能な移動通信拠点として運用できる。

  • S-07《アンカー》とK-03《ドリルクロー》の機体間通信
  • 城崎ナギら管制側との音声・映像通信
  • 荷重、張力、作業位置、機体警報等のデータ共有
  • 管制側からの作業情報・解析結果受信

ただし都市幹線通信そのものを代替するものではない。都市中継網が失われれば、機体間直接通信だけが残る場合がある。

7-11. 音声・メッセージ文化【確定】

社会全体として、音声通話、音声メッセージ、テキストはいずれも一般的。端末を扱える者について、年齢による大きな利用差は置かない。

既読表示は存在しない。

  • 送信済み
  • 配送済み

までは確認できるが、相手が実際に読んだ・聞いたことを示す既読状態は表示されない。

人物ごとの傾向:

  • レイカ:返信が早い。短文、要点のみ
  • ナギ:読んでも返信しないことが多い。急ぎだけ返す
  • 真琴:読んでも必要がなければ返信しない
  • 悠人:音声通話
  • ボルド:短い音声通話
  • ヒナセ:長い音声メッセージ。周囲の騒音入り
  • 澪:長文。推敲しすぎる
  • カイ:短く結論だけ
  • セナ:短文だが返答に迷う

休日の常設グループ通信は基本的にない。

7-12. 私用通信料金と局票【確定】

最低限の通信は生活基盤として配給に含まれる。

基本枠:

  • 標準テキスト
  • 低帯域音声
  • 基本的な音声メッセージ
  • 公共情報
  • 緊急通信

追加の局票負担が生じるもの:

  • 長距離・多段中継
  • 高帯域通信
  • 長時間映像
  • 大容量ファイル
  • 高品質映像通信
  • 優先通信枠

業務通信費は原則として所属局側の負担。

災害時には災害情報、安否確認、緊急音声、最低限の私用連絡等を一時無料開放することがある。

7-13. 外壁非公式通信網【確定】

外壁内部の通信は、外壁民が自分たちで構築・修復できる。

使用例:

  • 廃止中継器
  • 再利用アンテナ
  • 私設リピーター
  • 廃止有線の再利用
  • 新しく継ぎ足した通信線
  • 中古無線機
  • 音声メッセージの蓄積転送装置

水や電力と同様、都市から正式に届かない場合は自分たちで通す。都市側から見れば無登録通信設備になることがある。

7-14. 外壁と都市私用網の接続【確定】

外壁と都市通信網は完全には遮断されていない。

外壁住民・未登録者であっても、局票によってプリペイド通信IDを購入し、都市の私用通信網へ接続できる。物理媒体はSIMカード相当・内蔵認証相当のいずれでもよく、現時点では固定しない。

重要な区別:

通信IDを持つことと、住民IDを持つことは別。

未登録出生者である雨宮ヒナセも私用通信端末とプリペイド通信IDを持てるが、それによって正式な住民登録、医療、学校、宿舎、正規就労等の資格を得るわけではない。

7-15. 外壁の通信文化【確定】

都市中心部よりリアルタイム性への期待が低い。

  • 長い音声メッセージ
  • 接続できた時にまとめて送信
  • 人を介した伝言
  • 中継地点ごとの俗称
  • 数時間後の返信が普通

通話がつながらなければ、音声メッセージを残し、別の中継点から送る。

「南鉄塔から回して」
「三番梁の中継、まだ死んでる」

のように、通信設備そのものが生活地理の一部になっている。

7-16. 通信ログ・音声録音【確定】

都市公式通信網を使用した通信は原則としてログが残る。

記録対象:

  • 送信端末・送信者ID
  • 受信端末・受信者ID
  • 通信時刻
  • 通信種別
  • 接続先
  • 通信経路・中継点
  • 送受信両端の位置情報または接続位置
  • 業務通信の場合は案件・チャンネル等の関連情報

都市公式網上の音声通信は原則録音される。

ただし、記録されていることと、常時誰かが聞いていることは別である。

日常的に全通信を人間が監視しているわけではない。事故、重大トラブル、不正調査、監査等の必要が生じた時に、権限を持つ担当者が検索・抽出する。

一般局員は通信ログの存在を知っていても、直接扱うことには馴染みがない。

篠宮レイカは、設備ログ、運行ログ、旧形式アーカイブ等の扱いに長けているため、通信ログについても検索構造や絞り込みを理解できる。ただし、ログを扱う能力があることと閲覧権限を持つことは別である。

7-17. 位置情報と監視【確定】

都市公式通信では、通信の両端について位置情報または接続地点情報が記録される。

通常運用では、全住民・全職員の位置を誰かが常時追跡しているわけではない。

ただし、必要な権限があれば、

  • 過去の通信地点を追跡する
  • 現在接続している端末の位置を確認する
  • 複数ログから移動経路を再構成する

ことは技術的に可能。

この種の監視・記録解析を専門とする都市監査系統の担当部門が存在する方向とするが、組織の正式名称・所属・権限体系は現時点では未確定。

既存の昇降局保安群は、違法工事、危険人物、立入制限、現場確保等の実働を担う。通信ログや位置記録の専門解析は保安群そのものの通常業務にはしない。

誰も常に見ているわけではない。だが、必要になれば昨日の行動をかなりの精度で再構成できる。

7-18. 通信に関する未確定細部

後の因果を拘束する場面が発生するまで、以下は固定しない。

  • 端末の厳密な筐体形状
  • プリペイド通信IDの物理媒体
  • 使用周波数
  • 暗号方式
  • 通信距離の数値
  • 通信帯域の数値
  • バッテリー持続時間
  • ログ・音声の通常保存期間
  • 都市監査系統の正式名称、所属、閲覧許可手続
  • 端末紛失時の詳細な再発行・失効手順

これらは、本編の因果、事故、捜査、監査を左右する段階で正本化する。


第3部 人物別生活設定

8. 水無瀬 澪

住居

選別局職員用個室。物が少なく、黒・灰・無彩色。写真は飾らない。カメラデータは大量に保存する。他人を招くことはできるが、休日に招いても部屋着にはならず外出着で対応する。

睡眠・朝

専用寝間着はほぼなく、洗いすぎたインナーなどで眠る。休日は昼過ぎまで寝る。朝は固定手順で動き、前夜に風呂を飛ばした場合は朝シャワー。髪が少し湿ったまま出ることがある。

澪は不規則勤務者として、勤務特性に基づく個室簡易シャワーの対象である。朝シャワーは個室簡易シャワーを使う場合がある。

休日

洗濯、生活必需品と食料の買い物、通知確認。基本はだらだらして最低限の生活を戻す。

私服

黒・濃灰のジャケット、薄手ハイネック、長袖シャツ、細身パンツ、歩きやすい靴。露出少なめ。原色、白ワンピース、フリルは着ない。所持数は少ない。

お気に入りの私物

小型記録カメラ。旧型、衝撃に強く、写真と音声メモを残す。記録目的だが、実際には人の顔や生活の断片が多い。

友人・恋愛

同年代の同性友人が少なく、友人は欲しい。セナとの出会いが変化のきっかけ。恋愛への関心はあるが余裕がなく処理しない。同年代を意識しても表へ出さない。他人の恋愛話は流すが覚えている。身体的距離への抵抗が強い。

生活上の癖

帰宅すると最初に上着を脱ぐ。疲労度により、定位置、椅子の背、床へ変化する。

災害時

端末、カメラ、上着。カメラを取りに戻ることはない。避難中も記録しようとする可能性がある。

9. 立花セナ

住居

保安群職員用個室。澪より生活感があり、毛布、柔らかい衣類、髪留め、飲み物、軽食がある。澪を部屋へ呼び、自分は部屋着で対応する。

睡眠・朝

大きめのもこもこ上着、フリース、スウェット、毛布。朝に弱く、スヌーズする。制服を着ると仕事人格へ切り替わる。事件後は早く目覚め、シャワーが長くなり、食欲が落ちる。

セナは保安群の緊急待機要員として、勤務特性に基づく個室簡易シャワーの対象である。個室簡易シャワーには給湯量または連続使用時間の制限があり、長く使えば給湯枠終了へ至る。浴槽と広い洗い場は共用浴場を使用する。

休日

外出して服、髪留め、靴を見る。肉料理や甘い飲み物。普通の19歳へ戻る行為。

私服

手触り、着心地、暖かさ、値段、可愛さの順に見る。柔らかいニット、大きめパーカー、膝丈スカート、柔らかいパンツ、ブーツ。

お気に入りの私物

大きなフード付きのもこもこ上着。古く、毛玉があり、家でしか着ない。防具の反対。

友人・恋愛

同性の同年代友人が欲しい。澪は「澪」呼び。レイカは「レイカちゃん」呼び。レイカからは最初頼りなく見られるが、現場能力で認識を変える。カイとは気楽な同僚。恋愛への関心は強く、他人の恋愛話を真剣に聞く。身体接触は安心につながる。

生活上の癖

毛布の端を触る。悩み、通信、眠れない時、澪の話を聞く時に出る。

災害時

もこもこの服は置いていく。端末、靴、上着、業務通信装置を取る。失った後に、安心できる物がないことが効く。

10. 九条 カイ

住居・休日

生活用品は雑だが、重要物だけ定位置。音楽、電子タバコ、濃い味の食事、一人空間を好む。セナの部屋へ勝手には入らない。

私服

色落ちしたジーンズ、Tシャツ、薄いジャケット、スニーカーまたは作業靴。上着は腰へ巻く。

お気に入りの私物

古い音楽再生端末。有線イヤホン、接触不良、自分で補修、買い替えない。

友人・恋愛

つかず離れずが得意。暇ならセナに絡む。レイカとは兄妹的。恋愛への関心はあるが執着は弱い。他人の恋愛話は軽く扱うが、本気の傷は茶化さない。身体的距離は意外と守る。

生活上の癖

電子タバコは鞄へ戻す。音楽端末、電子タバコ、業務装備だけは定位置。

災害時

鞄ごと掴み、後戻りしない。

11. 篠宮 レイカ

立場・住居

若年技術職員用個室。同年代はおらず、大人に囲まれた異色の存在。孤高ではない。机に工具と自作模型。工作物を人に見せ、説明したがる。ナギが頻繁に寝落ちする。

睡眠・朝

年齢相応の揃ったパジャマ。定時起床、ベッド、洗顔、髪、眼鏡、朝食、制服、端末、チェックリスト。ただし二度寝、靴下紛失、朝食を急ぐなど子どもの抜けがある。

休日

端末設計、機械工作、小型昇降模型の改造。強制休養制度がある。

私服

自分で選ぶ。機能・サイズ・色を理詰めで決め、やや大人びて地味。セナから可愛すぎる服をもらい困惑するが、家で着る。

お気に入りの私物

自作の小型昇降模型。手のひらサイズ、滑車、小型モーター、停止制御、本物に近い音、外装未完成、安全装置だけ過剰。本人は試験装置と呼ぶ。

人間関係・恋愛

ナギとは相互依存の強い疑似家族。セナを最初は頼りなく見るが、現場能力を見て尊敬へ変わる。カイとは兄妹的な軽口。ボルドは「おじさん」。恋愛には興味があるが未知。

親密さと恋愛的接触の区別が未成熟。信頼相手には子どもの距離感で近い。ただし誰にでも無防備ではない。知らない成人男性から同じ距離感で来られるのはアウトであり、組織上の保護規範もある。

生活上の癖

寝る前に模型へ触る。ワイヤー、籠位置、停止位置、異音を確認する。

災害時

最優先は眼鏡、次に端末。模型には一瞬手を伸ばしかけるが、基本は置いていく。

12. 城崎 ナギ

住居・睡眠

活動途中で止まった部屋。洗濯物、酒、保存食、生活用品がある。タンクトップ、普通の下着、髪を下ろす。レイカの部屋で寝落ちすることが多い。

朝・休日

起床準備を削りすぎ、襟や髪が崩れるが、出勤後の判断は鋭い。休日は家事、買い物、酒、浴場、昼寝、レイカ。若手の緊急連絡だけ見る。一人が好きというより、他人を管理しなくてよい時間が好き。

私服

タンクトップ、薄いシャツ、ゆるいパンツ、古い上着、大きめコート。整える気が薄い。

お気に入りの私物

分厚い古いロックグラス。仕事終了の切替装置。平日は軽くすすぎ、休日にきちんと洗う。

人間関係・恋愛

レイカから癒しを得て甘える一方、レイカにも頼られる。セナとカイを職務上・感情上ともに気にする。恋愛への関心と経験はあるが、一人の方が楽。他人の恋愛話は真剣に聞く。自分から距離を詰めるのは平気だが、一方的に詰められるのは嫌。

災害時

グラスは置いていく。端末、身分証、上着、近くにいればレイカ、指揮系統を優先する。

13. 榊真琴

住居

昔結婚していた想定。最近は他人を入れていない。部屋は無機質ではなく、二人の生活が終わった後に更新されていない。二人分だった収納、使われない食器、片方だけ残る椅子、昔の家具配置が残る。

睡眠・朝・休日

選別局で寝袋や簡易寝台を使う。朝は眼鏡、モニター、夜間結果、水、洗顔、コーヒー、砂糖、記録確認。休日は洗濯、掃除、眼鏡、寝具、書類、甘味、料理。家事は保守点検。

私服

作業シャツ、厚手パンツ、ポケットの多い上着、作業靴、無地エプロン。

お気に入りの私物

摩耗した将棋またはボードゲームの駒。思考中に指で回す。

人間関係・恋愛

孤高。一人で成立するが人間嫌いではない。沈黙が苦痛でない相手なら同席できる。将棋やボードゲーム相手を求める。恋愛への関心はなく、過去の結婚で閉じた。他人の恋愛話は聞かない。身体的距離への抵抗が強い。

生活上の癖

甘い物の包みは整列させず、端やカップへ寄せ、後でまとめて捨てる。

災害時

最優先は眼鏡、次に端末・記録媒体。駒は意識して持ち出さず、普段からポケットに入っていたため残る。

14. 浅倉悠人

住居・朝

選別局職員用個室。書類、借り物、タオル、食べ残し、返却予定品、委員長からの預かり物が少量ある。朝は起床直後に連絡を見て返信し、自分の準備時間を失う。

休日

人に会う。配給所、避難所、市場、食堂、頼まれ物、委員長の手伝い、生活相談。頼まれ事が続くと「今日休みなんだけど」と文句を言うが、結局手伝う。

私服

薄手シャツ、パーカー、ワークパンツ、スニーカー、肩掛け鞄。灰、茶、くすんだ緑。最低限の清潔感。

お気に入りの私物

古い大きめの手帳。人名、家族構成、配給事情、連絡先、頼まれ事、借り物、困り事が記録され、委員長の訂正も入る。

人間関係・恋愛

委員長とは友人。委員長が事務、悠人が対人処理。恋愛への関心はあり、他人の相談には乗るが、自分への好意には鈍い。救護・支援で人に触れることへ慣れている。

生活上の癖

手帳を枕元へ置く。寝る前、夜中、朝一番に見る。

災害時

手帳を持つ。ただし人命が目の前にあれば落としてでも助ける。

15. ボルド

住居・睡眠・朝

外壁共同体。工具と寝床が近く、出入口と設備を見渡せる位置で眠る。危険装備だけ外す。朝は音、振動、湿度、風、接合部、工具、水を確認する。

休日

工具整備、ワイヤー、フック、油差し、靴、寝床、照明、他人の道具。手を動かすことが休息。

私服

厚手シャツ、作業ズボン、革ベスト、大型防寒コート、重い靴、工具ベルト。

お気に入りの私物

古い小型調整工具または隙間ゲージ。目盛りが薄く、考える時に触る。なくなると黙って探す。

人間関係・恋愛

友人という分類を必要としない。ミネとヒナセは家族同然。恋愛への関心はない。私的な身体接触は好まないが、作業・介助接触は平気。

生活上の癖

工具を作業前、作業後、就寝前、避難後に数える。普段は無言。一つ足りない時だけ止まる。

災害時

人命最優先。次に人を救うための小型工具を選別する。工具箱全部は持たない。

16. 雨宮ヒナセ

住居・睡眠・朝

外壁共同体。子ども、ボルド、ミネに近い。大きめのお下がりスウェット、短いパンツ。寝相が悪い。通常騒音では起きず、異常な金属音・圧力音で起きる。朝の身支度は雑だが工具確認は正確。

休日

市場、中古工具、部品露店、古着、保存食、手袋、肉の串焼き、小物、子どもの世話と遊び。

私服

短い革ジャケット、タンクトップ、身体に沿うシャツ、短いパンツまたは細身作業パンツ、頑丈なブーツ、腰ポーチ。露出多め。可愛いより格好いい。

お気に入りの私物

現場素材から自作した金属製髪留め。バルブ薄板、配管クランプ、ワイヤー端末金具、圧力計指針、真鍮シムなどを加工。ヒナセが自作し、最後の仕上げをボルドが直した。咥える部分には革または樹脂被覆がある。

人間関係・恋愛

子どもたちと近く、世話し、遊び、本気で喧嘩もするが友人ではない。同年代が少ない。第1話でセナを見て「顔色の悪い女」として記憶する。敵側だが、同年代で様子がおかしかったため気になる。恋愛への関心はあり、外壁では一緒に働けるか、背中を預けられるか、共同体へ入れるかが重要。身体距離は近いが、性的意図には警戒が早い。

生活上の癖

髪留めを歯で咥える。

災害時

子ども、動けない仲間、避難経路、必要工具、自分の私物の順。髪留めは髪についていれば残る。

17. ミネ

共同体の衛生管理者。洗濯順、水使用、子どもの髪と皮膚、発疹、怪我、寝具乾燥、汚れた作業着の分離を担う。ヒナセの濡れた髪を叱る。

ボルドとヒナセは家族同然。恋愛への関心はなく、他人の恋愛話は生活条件を含めて真剣に聞く。


第4部 主要な人物関係

18. 澪とセナ

  1. 真琴に連れられ、澪がアンカー修理を見学
  2. セナと業務上の知り合いになる
  3. 宿舎、食堂、洗濯区画、昇降機待機列などで再会
  4. 澪が短いメッセージを送る
  5. 会話が続く
  6. 澪が長文を送る
  7. セナが「直接話した方が早い」と部屋へ呼ぶ
  8. セナは部屋着、澪は外出着
  9. 最初は業務の話
  10. 徐々に事件後の感覚へ移る
  11. 会話がうまく進まなくても同じ部屋にいる

一方が一方を救う関係にはしない。

19. ナギとレイカ

上司、保護者、姉妹、友人に近い関係が重なる。

レイカはナギに生活判断、対人調整、感情の受け止め、最終責任、子どもでいられる場所を求める。

ナギはレイカに技術的確信、素直な反応、信頼、疲労時の安堵、守る対象の実感を求める。

共依存傾向はあるが、ナギは最終責任をレイカへ投げない。

20. セナとカイ

気楽な同僚。恋愛へ寄せる必要はない。カイは暇なら絡むが、深追いせず、私室へ無断で入らない。セナは雑に返せる。

21. 悠人と委員長

友人で相互依存。委員長が事務・記録・申請、悠人が住民対応・交渉・苦情・現場判断を担う。

22. ボルド・ミネ・ヒナセ

友人より家族・共同体。ボルドが設備と危険、ミネが生活と衛生、ヒナセが次世代の現場を担う。


第5部 恋愛・身体距離・職場規範

23. 恋愛への関心

関心あり:レイカ、セナ、カイ、ナギ、澪、悠人、ヒナセ。

関心なし:ボルド、真琴、ミネ。

24. 他人の恋愛話

  • レイカ:分析する
  • セナ:共感する
  • 悠人:整理し助言する
  • ミネ:生活条件を確認する
  • ナギ:本音を読む
  • ヒナセ:率直に聞く
  • 澪:流すが覚えている
  • カイ:軽く扱うが、深刻なら茶化さない
  • 真琴:基本聞かない

25. 身体的距離

抵抗が少ない:レイカ、ナギ、ヒナセ、セナ、悠人。

抵抗がある:澪、カイ、ボルド、真琴。

レイカは信頼相手に子どもの距離感で近いが、成人男性を含む外部者に無警戒ではない。

26. 共同浴場・共同居住の羞恥

女性全員にある。澪は強く、セナとレイカは年齢相応、ヒナセとミネは生活上の切替が早く、ナギは表へ出しにくい。ナギとレイカは互いに対して家族として見慣れている。

男性側は、ボルドと真琴は他人を意識せず、カイは多少あるが出さず、悠人は共同生活慣れで薄い。

27. 職場恋愛

原則自由だが責任を伴う。

  • 同一職務者を同時に休ませない
  • 指揮命令関係の交際は申告
  • 任務配置へ私情を持ち込まない
  • 同居による宿舎変更
  • 扶養登録
  • 緊急連絡先
  • 避難・救護資格との利益相反
  • 別離後も業務継続

制度上は恋人かどうかより、同居、扶養、生活共同体、緊急連絡先、居住登録が重要。


第6部 反復動作

  • 澪:帰宅すると上着を脱ぐ
  • セナ:毛布の端を揉む
  • カイ:電子タバコを鞄へ戻す
  • レイカ:寝る前に模型へ触る
  • ナギ:グラスを軽くすすぎ、休日に洗う
  • 真琴:甘味の包みを端へ寄せる
  • 悠人:手帳を枕元へ置く
  • ヒナセ:髪留めを歯で咥える
  • ボルド:工具を数える

これらは台詞なしで疲労、安心、緊張、生活の崩れを示す。


第7部 家族歴・体調・感覚演出

Version 2.0では、Version 1.1で未解決課題としていた「家族歴」「体調不良・怪我・看病」「個人を想起させる匂い・音」を、1〜5話の統合管理シートとの整合を確認したうえで確定設定へ昇格する。

設定の目的は、人物の現在行動を過去で説明し切ることではない。既存シーンで見えている癖、距離感、疲労、生活選択に、必要最小限の生活史と身体感覚を与えることにある。

28. 家族歴

28-1. 立花セナ

柔らかい布、毛布、もこもこした衣類への愛着は幼少期からある。

セナは昔から、答えの出ないことを考え続けて緊張を抱え込みやすい。

対象は恋愛や将来だけではない。

  • 人間関係
  • 失敗
  • 他人からどう見られているか
  • 仕事
  • 将来
  • 自分の判断が正しかったか

などを長く考える。

そのため、柔らかい触感を無意識の自己鎮静に使う習慣が形成された。

もこもこした上着や毛布は、第1話以降の事件によって初めて必要になった物ではない。以前からセナの生活に存在していた安心材料であり、事件後はその機能が十分に働かないことがある。

28-2. 九条カイ

現在、家族と呼べる相手はいない。

家族を失った時期、死別か離別か、そもそも家族関係が成立していたかは未確定とする。

現時点では「天涯孤独」や悲壮な過去を人物の説明原理にしない。

カイは現在の人間関係を現在の距離感で処理しており、家族不在を他者へ埋めてもらおうとはしない。

28-3. 城崎ナギ

現在、帰省先としての実家はない。

自室は存在するが、疲労時にはレイカの部屋の方が「帰ってきた」感覚を得ることがある。

これは制度上の住所ではない。

ナギがレイカの部屋へ立ち寄り、工作を眺め、途中で眠り、追い出されずにいるという反復によって形成された生活上の帰属感である。

ナギ自身はレイカへ最終責任を投げない。しかし、管理者として誰かを見続ける生活の中で、レイカの部屋は「管理し続けなくてもよい場所」に近づいている。

28-4. 浅倉悠人

悠人の世話焼きは、まず本人の気質として「人を放っておけない」ことから始まる。

加えて過去に、

自分がもう少し早く動けば、もう少し注意していれば、結果が違ったのではないか

と本人が考え続けている出来事がある。

その出来事が客観的に悠人の失敗だったかは確定しない。

悠人が自分へ責任を引き寄せている可能性を残す。

このため悠人は、相手のために動いている一方で、

  • 見捨てたと感じたくない
  • 後から後悔したくない
  • 自分が動けば防げるかもしれない
  • 周囲を守れている状態でいたい

という自分自身の不安や罪悪感を埋めるためにも動くことがある。

善意を否定しない。ただし、善意だけでできている人物にもいない。

28-5. ミネとボルド

二人の関係は、最初から家族や共同体ではなかった。

ミネは物資調達、生活品の手配、流通、取引相手との連絡に強く、ボルドは設備・配管・構造・応急修理の仕事を請ける。

ボルドが仕事に必要な部材をミネ経由で調達し、ミネ側の生活設備や取引先で修理が必要になればボルドが対応する、という取引関係から始まった。

二人の専門は重なりにくい。

  • ボルドは設備と危険判断
  • ミネは生活と流通

を担う。

互いの専門分野へ不用意に立ち入らないため、対立が少ない。

取引が継続するうちに仕事、生活、子ども、食料、修理、人の移動を一緒に処理するようになり、周囲へ人が集まり、共同体へ発展した。

現在も、

  • ボルドはミネの配給や生活管理へ細かく口を出さない
  • ミネはボルドの構造判断を軽々しく覆さない

という分業が残る。

ただし、生命に関わる場合は互いに止める。

28-6. 榊真琴

真琴は過去に結婚しており、配偶者とは死別している。

死別を、

最愛の相手を失って心を閉ざしたため現在の真琴になった

という単純な原因にはしない。

真琴は現在も人間と協働し、他者を評価し、必要な関係を構築できる。

死別後、一人で成立する生活が長期化し、それが現在の生活形態になった。

28-7. 真琴の旧生活

配偶者と暮らしていた頃の物は、捨てる理由がない限り残している。

  • 二人分だった食器
  • 使われない収納
  • 家具配置
  • 古い生活用品
  • 片方しか使わない道具

など。

これは思い出を保存するための聖域ではない。

壊れた物は普通に捨てる。

同じ物を買い直して「昔の状態」を復元しようともしない。

残っているが、保存しているわけではない。

という状態を基本とする。

28-8. 水無瀬澪

両親の遺品として、母親の指輪を一つ残している。

常時身につけない。

ペンダントにもせず、日常的に触る癖もつけない。

自室の引き出しや小さな保管箱に入っている。

写真を飾らず、過去を積極的に生活空間へ出さない澪が、それでも捨てていない私物として扱う。

28-9. 篠宮レイカ

レイカは幼少期に実親を失った。

その後は養育家庭で暮らす。

基礎教育課程で情報処理・制御分野への高い適性を示し、都市技術養成課程へ推薦された。

成績上位者や高適性者を対象とする若年職業保護制度を利用し、

  • 局票支給
  • 居住保護
  • 教育継続
  • 勤務時間制限
  • 若年区画
  • 成人職員による監督
  • 業務範囲管理

を受けながら昇降局へ配属された。

「天才孤児だから制度外の特例で職員になった」とはしない。

若年者が技術職へ入る制度自体は存在し、レイカはその制度の中でも際立って能力が高い人物である。

同年代の職員が周囲にいないのは、制度がレイカ一人のために作られたからではなく、この年齢で現場技術職まで到達する例が非常に少ないためとする。


29. 体調不良・怪我・看病

29-1. 無理を隠す人物

城崎ナギ

自分で「まだ動ける」と判断して申告しない。

他人の不調には早く気づくが、自分自身には同じ基準を適用しない。

水無瀬澪

隠そうと意識するより、体調を申告するという判断自体を後回しにする。

作業を続けられる間は業務を優先する。

29-2. 薬の扱い

ナギ

勤務、睡眠、食事が崩れると服薬時間も崩れる。単純に忘れることがある。

ボルド

忘れるというより、自分で必要性を過小評価する。

「まだ飲まなくていい」
「この程度なら平気」

と判断し、ミネに止められる。

29-3. 誰が誰を休ませるか

  • ナギ → レイカ、セナ、カイ
  • 悠人 → 委員長
  • 真琴 → 澪、悠人
  • ボルド → 現場で無理をしているセナ
  • ミネ → ボルド

ナギは若手の継続勤務可否を管理する。

真琴は情緒的に心配して休ませるのではなく、判断精度や作業精度が低下していると見て止める。

ボルドはセナの上司ではない。継続的な勤務管理はナギが担い、ボルドは現場で「その身体状態ではこの作業をさせない」という形で止める。

29-4. 勤務停止権限

ナギと真琴は、担当範囲において以下の現場権限を持つ。

  • 勤務停止
  • 当直解除
  • 現場離脱
  • 医務確認指示
  • 一時的な業務変更

長期の「休職」は別制度とし、医療・人事・所属局の正式判断を必要とする。

29-5. ナギの若手観察

ナギは医師のように診断するのではなく、長期間同じ若手を見てきた現場監督として「いつもと違う」を拾う。

見るもの:

  • 顔色
  • 紅潮
  • 目の焦点
  • 返答速度
  • 歩幅
  • 手の震え
  • 工具の持ち替え回数
  • 飲水量
  • 制服の乱れ
  • いつもより口数が多い/少ない
  • 座った時に立ち上がろうとしない

29-6. 真琴自身の疲労対処段階

真琴は疲労を感情ではなく処理能力の低下として扱う。

段階は以下。

  1. 椅子の上で腕を組み、短時間眠る
  2. 糖分・カフェインを入れる
  3. 寝袋または簡易寝台で横になって眠る
  4. 共同浴場で身体を切り替える
  5. 自宅へ戻り、本格的に睡眠を取る

上の段階で判断精度が戻らなければ次へ進む。

29-7. セナの身体反応

セナは睡眠不足と長時間疲労に弱い。

睡眠不足が続くと、

  • 判断への自信が落ちる
  • 考え込みが増える
  • 不安が強くなる
  • 感情の回復が遅くなる

一方、筋肉痛には比較的強い。

痛くても身体を動かせる。

擦過傷、打ち身、指を挟むなどの瞬間的な痛みは嫌いで、素直に「痛い」と反応する。

大きな負荷へ耐え、小さな痛みには顔をしかめる差を残す。

29-8. カイの怪我

怪我は丁寧に処置する。

  • 洗浄
  • 消毒
  • 固定
  • 経過確認

を面倒がらない。

精神論で放置しない。

身体も機械と同じく、壊れた箇所を放置すれば性能が落ちるものとして扱う。

29-9. 外壁での応急処置

速さを優先するが、無秩序な処置にはしない。

利用するもの:

  • 切断した軽量管
  • 廃材の平板
  • 保護材を巻いた細管
  • 梱包材
  • 清潔な布
  • ベルト
  • 安全帯
  • ワイヤー以外の柔軟な固定材

骨折時は軽量管や平板を副木として使い、皮膚へ直接硬材を当てず布や保護材を挟む。

出血時は清潔な布で圧迫し、その上から必要に応じて安全帯やベルトで固定する。

安全帯そのものを傷口へ直接巻くことは避ける。

29-10. ミネの看病

薬剤が限られるため、以下を優先する。

  • 睡眠
  • 水分
  • 栄養
  • 清潔保持
  • 保温または適切な冷却
  • 発汗後の着替え
  • 感染が疑われる場合の分離
  • 症状記録
  • 悪化時の外部搬送判断

「免疫力を高める」という抽象概念より、身体が回復できる条件を整える。

29-11. ボルドの古傷

背中に、過去の設備事故による古傷がある。

戦闘傷ではない。

長時間屈む、冷える、重量物を持つなどで痛むことがある。

  • 冬に身体を伸ばす
  • 入浴で温める
  • 重い工具を持つ前に一瞬姿勢を直す

程度の生活動作として見せる。

29-12. 澪と悠人の過労

二人とも過労傾向があるが、原因が違う。

集中すると、自分の生活工程を削る。

  • 食事
  • 入浴
  • 睡眠
  • 洗濯
  • 私用連絡

を後回しにする。

悠人

他人の問題を引き受けすぎて、自分の時間を失う。

  • 住民相談
  • 頼まれ事
  • 委員長の補助
  • 移動
  • 連絡
  • 調整

が積み重なり、自分の休養が消える。


30. 人物を想起させる匂い・音

ここで扱う「匂い」は体臭の固定設定ではない。

その人物の部屋、衣類、仕事場、持ち物、近くにいる時の環境から連想される生活上の匂いである。

「音」も本人が常に発する音ではなく、その人物の仕事、生活、記憶を象徴する反復音として扱う。

30-1. 水無瀬澪

匂い

  • 石鹸
  • 古いカメラや機械の乾いた匂い

  • 小型記録カメラのシャッター音

30-2. 立花セナ

匂い

  • 柔軟剤
  • 洗った布
  • 湿った髪

  • 張力の掛かったワイヤーが低く鳴る音

この音はアンカーの記憶と結びつき、使命感と恐怖の両方を持つ。

30-3. 九条カイ

匂い

  • 電子タバコの甘い蒸気香料
  • 金属
  • 古い鞄

  • イヤホンから微かに漏れる音楽

30-4. 篠宮レイカ

匂い

  • 洗剤
  • 清潔な布
  • 小型機械の金属と樹脂

  • 自作模型や小型機械の駆動音

30-5. 城崎ナギ

匂い

  • 私生活ではグラス周辺に残る酒
  • コーヒー
  • 乾ききらない髪

常時酒臭い人物にはしない。

  • 巨大昇降機の低い駆動音

30-6. 榊真琴

匂い

  • 甘味や飲料から漂う人工的な果実香
  • バニラ香
  • コーヒー

香水として本人が付ける設定ではない。

  • 端末冷却ファンの連続音

30-7. 浅倉悠人

匂い

  • 消毒液
  • 避難所や配給所の空気

  • 群衆のざわめき
  • 誰かが悠人を呼ぶ声

悠人だけは個人の機械音より、他人の声に囲まれている環境音が象徴になる。

30-8. ボルド

匂い

  • 機械油
  • 工具鋼
  • 古い革

  • ワイヤー巻取機の低い巻取り音
  • 工具を順番に置く小さな金属音

30-9. 雨宮ヒナセ

匂い

  • 金属
  • 防腐材

  • 流水

水はヒナセにとって単なる設備音ではなく、生活が成立している音である。

30-10. ミネ

匂い

  • 日なたで乾かした布や寝具
  • 洗剤
  • 調理の湯気

「日光そのものの匂い」ではなく、日照を確保して乾かした生活用品から感じる匂いとして扱う。

  • 鍋をかき混ぜる音
  • 食器の触れ合う音
  • 包丁が作業台を打つ音

共同体の生活が回っている音として扱う。


第8部 Version 2.2以降で詰める課題

Version 2.0で、家族歴、体調不良・怪我・看病、人物を想起させる匂い・音まで確定した。

以後は人物の内面設定を増やすより、生活文化と制度の実装を深める。

31. 宗教・死生観/死亡・喪失・出生制度

宗教観、死生観、死亡認定、喪失認定、仮承継、生存復帰、出生登録、未登録出生者、外壁社会との接続については、独立正本資料『宗教・死生観_死亡・喪失・出生制度設定資料_v1.1』へ分離済み。

生活設定資料では、個別人物の日常・家族・住居・通信等と接続する範囲だけを扱う。婚姻、同居、扶養、再婚、共同財産等の詳細制度は引き続き今後の検討対象。

32. 娯楽文化

  • 音楽の流通と媒体
  • 映像作品
  • 酒場
  • 浴場
  • 市場
  • 劇場
  • 賭け事
  • ボードゲーム
  • 子どもの遊び
  • 外壁の祭り
  • 局主催の慰労行事
  • 階層による娯楽格差

33. 私服のビジュアル規格

  • 基本色
  • 素材
  • 春夏秋冬
  • 室内・外出・作業
  • 靴、鞄、アクセサリー
  • 摩耗箇所
  • 修理跡
  • 局票価格帯
  • 正規市場品か中古品か
  • お下がりの出所

34. 部屋の平面・家具配置

  • ベッド位置
  • 配管
  • 収納
  • 洗面
  • 照明
  • 私物の定位置
  • 他人が座る場所
  • 災害時の避難経路
  • ナギがレイカの部屋で寝る位置
  • セナの部屋で澪が座る場所
  • 真琴の旧夫婦生活の痕跡

35. 通信関連で今後詰める細部

Version 2.1で通信体系の主要部分は確定した。以後は、後続シーンの因果を拘束する場合のみ次を詰める。

  • 端末の厳密な筐体形状
  • プリペイド通信IDの物理媒体
  • 使用周波数、暗号方式、通信距離、帯域の具体値
  • バッテリー持続時間
  • 通信ログ・音声録音の通常保存期間
  • 都市監査系統の正式組織名・所属・閲覧権限
  • 端末紛失時の失効、再発行、局票・認証への影響

36. 恋愛と制度

  • 交際申告
  • 同居申請
  • 宿舎変更
  • 扶養
  • 共同財産
  • 局票
  • 救護優先
  • 妊娠・出産
  • 未成年職員の保護
  • 上司部下関係
  • 外壁共同体での婚姻
  • 別離後の居住権
  • 恋人と家族の制度差

37. 本編への実装

生活設定を説明しすぎず、各シーンで一つか二つだけ使う。

候補:

  • 澪が上着を椅子へ掛ける
  • セナが毛布の端を触る
  • 澪の長文メッセージ
  • セナが部屋へ呼ぶ
  • ナギがレイカの部屋で寝落ち
  • レイカが模型に触れる
  • ヒナセが髪留めを咥える
  • ボルドが工具を数える
  • 悠人が手帳を見ながら住民対応
  • 真琴が眼鏡を掛け、甘味を口へ入れる
  • カイが電子タバコを鞄へ戻す
  • B-19避難民の登録・救護優先問題
  • 賄賂を示唆する名簿上の不自然な変更
  • ナギが若手の返答速度だけで不調を察する
  • 真琴が糖分で戻らず寝袋へ移る
  • ミネがボルドへ薬を飲ませる
  • レイカの養成課程や保護制度を説明ではなくID・勤務制限・若年区画として見せる
  • 真琴の部屋に使われない二人分の食器が残る
  • 澪の母親の指輪は必要な場面まで引き出しの中に置く

生活設定は反復動作、衣服、部屋、買い物、通信、体調、沈黙、環境音で見せる。


38. Version 2.1の結論

Version 1.1までに成立した生活基盤へ、Version 2.0では「なぜその人がその生活をしているのか」を説明しすぎない範囲で生活史と身体感覚を追加した。

重要なのは、過去が現在を一義的に決める構造にしないことである。

  • セナが柔らかい物を好むのは、事件後のトラウマだけではない
  • 悠人が人を助けるのは、罪悪感だけではない
  • 真琴が一人でいるのは、死別だけが理由ではない
  • レイカが優秀なのは、孤児だからでも制度外の特例だからでもない
  • ナギがレイカの部屋で落ち着くのは、保護者役が逆転したからではない

人物は一つの過去、一つの傷、一つの属性で説明しない。

バベルの人物は、都市の制度、仕事、共同体、身体、私物、過去を抱えながら、毎日の小さな判断を積み重ねて生活している。

Version 2.1では、その生活基盤に通信インフラ、端末の使い分け、通信障害、外壁通信、記録・位置情報までを追加し、「誰と、どこまで、どの手段でつながれるか」も生活条件の一部として正本化する。


変更履歴

日付変更内容変更理由
Version 1.12026-07-27標準宿舎の共用浴場と、夜勤・緊急出動・汚染作業に対応する一部職員用個室の簡易シャワーを区別。澪とセナを対象者として明記04-H監査反映に伴い、勤務特性と宿舎設備の適用範囲を恒久設定化するため
Version 2.02026-08-29Version 1.1の未解決課題28〜30を確定設定化。家族歴、体調不良・怪我・看病、人物を想起させる匂い・音を1〜5話の統合管理シートと照合して追加。悠人の過去は本人の負い目として限定し、レイカは制度外特例ではなく若年職業保護制度内の高適性者として整理。真琴の死別、澪の母親の指輪、ナギの帰属感、ミネとボルドの関係形成を追加既存シーンの人物像を説明過多にせず補強し、生活史・身体状態・感覚演出を恒久設定として次話以降へ引き継ぐため
Version 2.12026-09-05通信体系を正本化。業務無線、業務端末、私用端末、固定通信、HUD、制圧フレーム搭載通信系、通信網階層、障害段階、災害優先、外壁非公式網、プリペイド通信ID、通信料金、ログ・音声録音、位置情報を追加。既読表示を廃止し人物別通信癖を同期。宗教・死生観/死亡・喪失・出生制度は独立正本資料へ分離済みとして同期第1〜5話ですでに使用してきた通信描写を統一し、都市側と外壁側の生活・監査・災害対応・未登録者の通信利用を一つのルールで扱うため

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