『バベル:リビルド』

宗教・死生観/死亡・喪失・出生制度設定資料 v1.1

作成日:2026-08-29
位置づけ:『生活設定資料 Version 2.0』「31. 冠婚葬祭」から派生した基礎社会制度資料
管理状態:主要骨格確定/制度細部・固有名の一部は未確定


0. 文書目的

本資料は、『バベル:リビルド』における宗教観・死生観と、死亡、喪失、出生、住民登録、外壁社会を一つの社会構造として統合するための基礎資料である。

バベルでは、黒海への転落、地区崩落、構造切断、昇降事故、外壁事故などにより、

  • 遺体が戻らない
  • 生存確認ができない
  • 居住区ごと消失する
  • 数百人、数千人単位で所在照合が必要になる
  • 行政記録上は消えていても、実際には外壁で生活を続けている人間がいる

という事態が恒常的に発生し得る。

そのため、現代社会と同じ「生存/死亡」の二値だけでは生活制度が成立しない。

本資料では、

  • 死亡認定
  • 喪失認定
  • 仮承継
  • 生存復帰
  • 未登録出生者

を定義する。

また、これらを単なる法律制度として扱わず、

  • 宗教観
  • 死生観
  • 財産
  • 家族
  • 居住
  • 局票
  • 医療
  • 教育
  • 移動
  • 外壁社会
  • 都市と外壁の相互依存

まで一本の因果として接続する。

本資料の中心命題は次の通り。

バベルにおいて「都市に存在すること」と「人間として生きていること」は同じではない。

都市の記録から喪失した人間が、外壁では生活し、子を産み、技能を継ぎ、都市そのものを支えることがある。

この矛盾を、バベル社会の単純な欠陥や悪政ではなく、長期にわたって形成された社会構造として扱う。


1. 設定状態の読み方

1-1. 確定

今回の検討で採用し、今後の制作で前提としてよい内容。

1-2. 設計方針

方向性は確定しているが、固有名、数値、担当機関、細かな運用などは必要になった段階で決める内容。

1-3. 文化設計候補

世界観には適合しているが、本編・個別施設・個別台詞へ正式採用する前の候補。

1-4. 未確定

今回の議論では決めない内容。他チャットで本資料を読み込む際、未確定項目を推測で固定しない。


2. 既存正本との接続

2-1. B-19制御落下

B-19地区は5,000名超の居住登録規模を持ちながら、制御落下後は現地捜索不能、遺体・遺留品回収の見込みなし、避難・移送記録照合継続中、所在未確認者ありという状態になる。

作戦成功は、落下方向制御と残存都市への連鎖崩壊回避を意味するだけで、住民個々の死亡確認を意味しない。

つまり、

「地区は失われた。しかし、その地区にいた個々人が死亡したとは確認できない」

という大量の中間状態が発生する。

喪失制度は、この状態を処理するための制度として設計する。

2-2. 記録は消滅しない

第4話では、B-19は都市構造図上では空白へ変わる一方、過去記録は論理削除・非表示として残る。

したがってバベルの制度は、

現在の有効状態から外すこと

過去に存在した事実を消すこと

を分けている。

喪失認定もこの思想を継承する。

喪失者は「存在しなかった人間」になるのではない。現在の都市運用上、現役住民として扱われなくなるだけである。

2-3. ボルド

ボルドは現行の居住・作業・納税・医療記録には存在しないが、古い外壁昇降路保守記録には痕跡が残る。

第4話では仮ID、監視付き仮宿泊、移動制限、生活準備分局票の前貸し、臨時協力員候補として都市へ限定接続され、第5話では臨時協力員として点検に参加する。

この既存描写は、「喪失者」「限定接続」「技能利用」の代表例として扱える。

2-4. 外壁社会

外壁では、局票、現物交換、信用取引、労働返済、共同体単位の借りが併用されている。

生活再建組36名は、都市から正式に選ばれた避難民ではなく、自力避難した集団である。

旧保安・保守倉庫側では、

  • 公的保障がない
  • 水も自力で探す
  • 医療設備も乏しい
  • 共同体内部で役割と優先順位を決める
  • 都市側への正式公認を求めず潜伏する

という生活を選んでいる。

したがって外壁は、

「都市に入りたいのに入れない人だけが集まる場所」

ではない。

都市制度から距離を置くこと自体に実利や自由を感じる者も存在する。


第1部 宗教観・死生観

3. 共通死生観

3-1. 核となる言葉【確定】

バベル社会に広く共有される死生観の核は、次の通り。

人は死ぬ。身体は戻らないこともある。 私たちには、その先が何かを知ることはできない。 だから生者は名前と生きた痕跡を残す。 そして、自分たちの生活を続ける。

これは特定宗派の正式教義ではない。

信仰の有無、宗派、社会階層を越えて、バベル社会に広く共有される生活倫理に近い。

3-2. 「終末後の宗教」【確定】

バベルの宗教文化は、

終末を待つ宗教ではなく、終末の後にも生活が続いてしまった人間の宗教

として捉える。

旧世界がどのように滅び、黒海とバベルがどのように成立したのかについては、宗派や思想によって解釈が異なってよい。

しかし生活者に共通する現実は、

  • 世界は既に大きく壊れている
  • 人間は今も死ぬ
  • 救済が完成したようには見えない
  • それでも水を通す
  • 機械を直す
  • 食事を作る
  • 子どもを育てる
  • 明日も仕事へ行く

ということ。

そのため宗教的な問いは、

「いつ終末が来るか」

より、

「終末の後に残された生活をどう続けるか」

へ移っている。


4. 宗教は均質ではない

バベルに単一の国教を置かない。

存在し得るのは、

  • 一神教的信仰
  • 古いキリスト教文化の残響を持つ宗派
  • 神を人格的存在として考えない思想
  • 無宗教
  • 儀礼だけを守る生活者
  • 外壁的な実践主義
  • 終末論を研究する少数宗派

など。

共有されるのは死後の世界についての答えではない。

身体が戻らなくても、その人が生きた痕跡を残す。 生者は生活を止めない。

という態度である。


5. キリスト教文化との距離

宗教文化の感触としては、中世ヨーロッパ的な絶対神中心社会や、旧約五書を直接社会法とする世界にはしない。

参考となるのはむしろ、

  • 個人の信仰
  • 簡素な祈り
  • 豪華な祭壇を必要としない
  • 宗教者不在でも祈れる
  • 神との関係を日常生活の中に置く

という、プロテスタント文化が長い年月を経て薄く社会へ残ったような状態。

ただし、現実のプロテスタント教義をそのまま採用するわけではない。

バベルでは、

祈っても配管は直らない。
祈っても崩落した区画は戻らない。
祈っても黒海から遺体は戻らない。

それでも祈る人はいる。

神は、

人間には知ることのできないものを、最後に預ける場所

として残る。

死者に対しても、

「必ず救われた」

と断言するより、

「その先は、私たちの知るところではない」

という態度が受け入れられる。


6. 高さと宗教的象徴

6-1. 高層=高次の視点【設計方針】

バベル構想初期から存在する、

高層へ行くほど、人間は高次の視点を持つ。
神の視点へ近づく。

という発想を、古い宗教・都市文化の象徴として残す。

高層では実際に、

  • 黒海から遠い
  • 都市全体を俯瞰しやすい
  • 中枢設備が集まる
  • 都市全体を対象とする判断が行われる

ため、

上昇/高み/全体を見ること/神の国へ近づくこと

が文化的に結び付いた可能性がある。

ただし、

高層住民ほど精神的に優れている

という客観的事実にはしない。

むしろ、

地理的な高さと精神的な高さを、人間が混同してきた文化

として扱う。

6-2. 選別局との接続

選別局、特に榊真琴は、

  • 一人の人間
  • 一つの家族
  • 一区画

ではなく、

  • 都市幹構造
  • 連鎖崩壊
  • 都市人口
  • 都市寿命

を見ることを要求される。

これは、

神のように全体を見なければならないが、本人は神ではない

という危うい立場である。


7. 外壁の宗教感覚

外壁では、

  • 今日水が出るか
  • この梁が今夜持つか
  • この子が食べられるか
  • 仲間が帰ってくるか

が重要。

そのため、

超越を否定しないが、超越に実務を任せない

という生活倫理が強い。

感覚としては、

「神が世界を見るとしても、俺たちはこのボルトを締めるしかない。」

に近い。

外壁民が無神論者という意味ではない。

祈ることと手を動かすことを分けている。


第2部 宗教観が生活へ残したもの

8. 基本方針【確定】

バベルの宗教文化は、住民が日常的に神学を語ることで表現しない。

むしろ、

  • 葬儀の定型句
  • 昇降機や設備の古い名称
  • 区画名
  • 建設期の礼拝所
  • 死者に対して自然に発せられる一言
  • 「上る」「残る」「続ける」「名を記す」といった日常語

の中へ、古い宗教思想が摩耗した状態で残っている。

現在の住民の中には、その言葉の宗教的由来を意識していない者も多い。

したがって本編では、

宗教について説明する

のではなく、

昔の宗教観から生まれた言葉や施設を、登場人物が日常のものとして使っている

状態を優先して描く。


9. 葬送語

9-1. 基本思想【確定】

バベルの葬送では、

「安らかに眠る」

より、

「残る」「記す」「引き継ぐ」「続ける」

という発想が強い。

これは、遺体が戻らない死が珍しくなく、死者を埋葬することより、

  • 名前
  • 記録
  • 道具
  • 仕事
  • 技術
  • 記憶

を生者側へ残すことの方が、社会的に重要になったためである。

9-2. 都市側の標準的弔辞【文化設計候補】

都市側では、宗派を問わず使用可能な簡素な弔辞として、次のような言葉が成立し得る。

「ここに名を残す。 身体が戻らなくとも、生きたことは失われない。 務めは終わった。 残された者は、今日を続ける。」

ここでは死後について断言しない。

また、

「良い場所へ行った」
「神のもとへ帰った」

といった特定教義への依存も避けている。

そのため、信仰を持つ者、無宗教者、異なる宗派の者が同じ式へ参加できる。

9-3. 短い常套句【文化設計候補】

より短い形として、

「名は残る。私たちは続ける。」

が考えられる。

葬儀だけでなく、慰霊、災害現場、遺体未回収者、喪失者を死者として弔う時にも使用可能。

バベルの死生観を最も短く圧縮した言葉の一つになる。

9-4. 外壁での弔い【文化設計候補】

外壁では、同じ思想がもっと生活語へ崩れる。

例:

「こいつがやった仕事は残ってる。」

「後は俺たちでやる。」

正式な弔辞ではなく、

  • 道具を引き継ぐ
  • 修理跡を見る
  • 誰かの仕事を完成させる
  • 仲間の担当を代わりに引き受ける

といった行為そのものが弔いになる。

したがって、

都市側は「名を残す」。 外壁側は「仕事を残す」。

という違いはあっても、根底の死生観は共通する。


10. 昇降機と宗教語

10-1. 現在の公式名称

現在の行政・技術用語としては、

  • F-03主昇降路
  • 第七幹線昇降機
  • 上層連絡線

など、機能を示す無機質な名称が使用される。

これは現行の都市管理体系による名称。

10-2. 古い昇降機名【文化設計候補】

一方、建設期から存在する昇降機、昇降塔、長距離連絡線などには、古い宗教文化に由来する名称が残っている可能性がある。

候補:

  • 階梯
  • 天路
  • 上庭線
  • 黎明線
  • 天蓋線
  • 晨星線

特に「階梯」は、

上へ行くこと=高次へ近づくこと

という古い都市思想を自然に含む。

しかし現在の職員は宗教的意味を意識せず、

「階梯三号、止まってる。」

程度の日常語として使用する。

重要なのは、

宗教語が宗教語でなくなり、設備名称として摩耗していること。

10-3. 昇階塔【文化設計候補】

さらに古い大型昇降施設には、

昇階塔

のような名称も考えられる。

建設当初は、物理的上昇、精神的上昇、神の国への接近を重ね合わせた名称だった可能性がある。

しかし現代では単なる施設固有名として認識されている。


11. 区画名称

11-1. 高層区画【文化設計候補】

古い高層区画には、

  • 上庭
  • 白庭
  • 天蓋
  • 高苑
  • 晨光
  • 上環

など、自然・光・天上を連想させる詩的名称が多く残る可能性がある。

これは、

上へ行くほど神の国へ近づく

という建設期の文化思想の痕跡。

11-2. 中層区画【文化設計候補】

中層では宗教色が薄れ、

  • 中庭
  • 灯環
  • 第二環
  • 中継庭

など、詩的な旧名と都市機能語の中間のような名称が多くなる。

11-3. 低層・外壁【文化設計候補】

低層・外壁では、

  • 根層
  • 基部
  • 外環
  • 支脚
  • 下環

など、構造そのものを示す名称が多くなる。

11-4. 名称分布の意味

重要なのは、

高層だけが比較的詩的で、下へ行くほど構造語へ近づく

という文化的偏り。

これは現在の都市が意図的に作った階級制度とは限らない。

建設初期に、

高層=神へ近い場所
低層=都市を物理的に支える場所

という思想があった痕跡が、区画名称だけに残った可能性がある。

現在の住民は、

「上庭? ただの住宅区画だけど。」

程度にしか認識していない。

つまり、

思想は失われても、名前だけが残っている。


12. 古い礼拝所

12-1. 巨大宗教施設を基本にしない【設計方針】

バベルでは、巨大な大聖堂を都市宗教の中心にするより、

小さな礼拝室・祈祷室が都市インフラの各所へ散在している

方が世界観に合う。

建設期には、

  • 昇降機乗換層
  • 作業員宿舎
  • 病院
  • 外壁保守拠点
  • 長距離昇降路待機階
  • 危険作業拠点

などに小規模な礼拝室が設けられていた可能性がある。

12-2. 現在の状態

現在では、

  • 倉庫になった
  • 休憩室になった
  • 仮眠所になった
  • 壁だけ残った
  • 標章だけ残った
  • 設備更新時に半分潰された

ものも多い。

宗教施設として正式運用されていなくても、完全には普通の部屋になっていない。

そこで、

  • 仕事前に一人で座る
  • 仲間の死亡後に立ち寄る
  • 工具を置いて休む
  • 祈らずにただ黙っている

人がいる。

12-3. 礼拝所に残る言葉【文化設計候補】

古い壁面には、

「ここより先を、私たちは知らない。」

といった言葉が残っている可能性がある。

誰が書いたのか、どの宗派の言葉なのか、正確な由来すら現在では分からない。

それでも、

その部屋では自然と少し声を落とす。

その程度の宗教性が、現在のバベルには合う。


13. 誰かが死んだ時に出る言葉

以下はキャラクター描写の方向性を示す演出候補であり、個別本編採用までは確定台詞としない。

重要なのは、全員が同じ宗教語を使わないこと。

死生観は共有していても、

死を受け止める方法は、その人物の職業・性格・役割によって違う。

13-1. 城崎ナギ

候補:

「……名前、残しておいて。」

ナギは感情そのものを長く語るより、今すべきことへ変換する。

「忘れないで」ではなく「記録を残す」という業務語へ寄る。

13-2. 篠宮レイカ

候補:

「記録は消さないよね。」

都市の情報処理を日常的に扱うレイカにとって、記録から消えることは非常に具体的な意味を持つ。

13-3. セナ

候補:

「……ちゃんと帰れたのかな。」

「帰る」が家族のところ、仲間のところ、死後の場所のどれを意味するのか本人にも明確ではない。

13-4. カイ

候補:

「……そっか。」

その場ではそれだけ。後から一人になった時に音楽を止めるなど、行動の変化で出す。

13-5. 浅倉悠人

候補:

「家族には?」

死者そのものより、残された生者に何が必要かを最初に考える。

13-6. 水無瀬澪

候補:

「写真、あります。」

死者について語る代わりに、その人が存在していた証拠を探す。

13-7. 榊真琴

第一声候補:

「死亡確認は?」

これは冷淡だからではない。

死亡と喪失を区別しなければ、その後の処理を誤ることを知っているから。

死亡確認後には、

「記録を閉じるな。」

のような言葉が出てもよい。

13-8. ボルド

候補:

「あいつの工具は?」

単なる遺品整理ではない。

外壁では、誰がその仕事を引き継ぐのかという問いでもある。

13-9. 雨宮ヒナセ

候補:

「……置いてけないよ。」

対象は必ずしも遺体ではない。道具、仕事、名前、仲間の痕跡を指す可能性がある。

13-10. ミネ

候補:

「名前、ちゃんと呼んでやりな。」

外壁では正式な住民記録を持たない人間もいる。

だから、

他人がその人の名前を覚えていること自体が、その人物の社会的記録になる。

未登録出生者や喪失者が多い外壁では、特に重い言葉になる。


14. 宗教文化の表現原則【確定】

バベルの宗教性を表現するときは、

  • 神学説明
  • 長い宗教講義
  • 宗派紹介

を先に出さない。

代わりに、

  • 昇降機の名前に「天」が残る
  • 高層区画に「庭」が多い
  • 死者について「名を残す」と言う
  • 古い礼拝室では無宗教者でも少し声を落とす
  • 「ここより先を、私たちは知らない」という言葉が残る
  • 外壁では死者の工具を誰が使うかを決める

といった生活描写によって表現する。

つまり、

宗教そのものを見せるより、宗教が社会に残した癖を見せる。

これをバベルの宗教文化描写の基本原則とする。


第3部 死亡認定

15. 死亡認定

15-1. 定義【確定】

死亡認定とは、

特定個人が死亡したことを、都市制度上確定する手続き

である。

喪失認定とは完全に分ける。

15-2. 性質【確定】

死亡認定は、

  • 個別
  • 慎重
  • 証拠重視
  • 原則として不可逆

とする。

遺体、医療上の死亡確認、本人同定、必要な記録照合を重視する。

大災害だからといって、死亡確認そのものを大量・簡便処理しない。

15-3. 効果【設計方針】

死亡認定後は、

  • 現役住民資格終了
  • 職員資格終了
  • 扶養関係更新
  • 本承継
  • 死亡補償
  • 遺品引渡し
  • 婚姻・生活共同体の法的整理
  • 局票・契約・居住権の本処理

へ進む。

詳細な相続順位等は別途決める。


第4部 喪失認定

16. 喪失とは何か

16-1. 定義【確定】

喪失認定とは、

その人物が死亡したと確定する手続きではない。 都市が、その人物を現役の住民として扱い続けることを停止する行政上の認定である。

つまり、

「死んだ」と決める制度ではなく、 「現在都市にいる者として、資源と権利を保持し続けない」と決める制度。


17. なぜ喪失制度が必要なのか

死亡確認まで待ち続ければ、

  • 空いた宿舎を永久に保持する
  • 局票口座を凍結し続ける
  • 家族が生活費を使えない
  • 子どもの扶養者を変更できない
  • 事業が停止する
  • 工具や設備を誰も引き継げない
  • 都市の人口計画を更新できない

という問題が起きる。

だから喪失制度は、

人間を切り捨てるためではなく、生者の生活を止めないために必要な制度

として成立する。


18. 喪失認定の開始

18-1. 「危難が去った時」【確定】

固定の72時間などを一律基準にはしない。

喪失認定が可能になる時点は、

当該危難が去った時

とする。

意味は、

その災害・事故について、通常の救助・生還可能性を前提に、その人物を現役住民として扱い続ける段階が終了した時。

18-2. B-19

B-19なら、

  • 制御落下完了
  • 黒海への沈下
  • 現地捜索不能

が確定した時点から喪失処理へ進める。

避難・搬送・生存記録を機械照合し、条件を満たす住民を大量に喪失候補へ移す。

死亡認定ではないので、遺体を待つ必要はない。

18-3. 他の事故

  • 昇降路閉塞で内部に生存可能空間がある:危難継続。即時喪失にしない
  • 単なる通信断:喪失根拠として弱い
  • 避難経路が複数残る:認定は遅れる
  • 区画が黒海へ完全落下:比較的早期に認定可能

19. 大量処理【確定】

喪失認定は死亡認定と異なり、

簡便・大量・システマティック

に処理できる。

照合対象は、

  • 最終居住登録
  • 入退室
  • 避難名簿
  • 仮ID
  • 搬送
  • 医療受入
  • 昇降利用
  • 通信
  • 生存申告
  • 家族申告

など。

大災害では数百人、数千人単位で一括処理できる。

そのため必然的に雑になる。

  • 非公式経路で逃げた
  • 端末を失った
  • 仮IDを受けていない
  • 救護記録が遅れた
  • 外壁へ逃げた
  • 元から未登録だった

人間を誤って喪失へ入れることがある。

喪失制度は、

精度より都市運用を止めないことを優先する危うさ

を持つ。


20. 喪失者の記録

喪失しても過去記録は消去しない。

  • 氏名
  • 居住歴
  • 職歴
  • 納税
  • 技能資格
  • 医療
  • 家族
  • 最終位置

などは保持される。

喪失とは、

存在しなかったことにする処理ではない。


第5部 仮承継

21. 定義【確定】

喪失者について、死亡認定を待たず、

家族・生活・生業を停止させないため、一定範囲の財産・契約・権限を暫定的に引き継ぐ制度

を仮承継とする。

本相続ではない。


22. 仮承継可能行為

基準は財産額ではなく、

本人が生きていたなら、通常の生活または通常の生業として行っていた行為か。

22-1. 通常生活

  • 食費
  • 水・熱・電力
  • 宿舎費
  • 医療
  • 教育
  • 日用品
  • 通常修理
  • 通常契約更新

など。

22-2. 通常生業

  • 商品仕入れ
  • 材料購入
  • 定期取引
  • 通常設備更新
  • 商品・資産売却

など。

不動産・居住権相当の売買を普段から生業としていた人物なら、その通常事業としての売買は仮承継でも可能になり得る。


23. 制限

本人の財産状態を根本的に変える行為は原則不可。

  • 生業外の大規模資産処分
  • 事業清算
  • 長期居住権の全面処分
  • 高額財産の無償譲渡
  • 最終的な遺産分割

など。

「これは通常行為か、財産処分か」という争いが生じる。

細かな裁定機関・審査手続は未確定。


第6部 生存復帰

24. 生存復帰者【確定】

過去に都市登録が存在し、喪失認定後に生存確認され、都市制度へ再接続された者。

生存復帰には、復活させる過去登録が必要。

したがって出生時から未登録だった人間は生存復帰できない。


25. 生存復帰しても生活は戻らない

生存復帰によって、

  • 氏名
  • 個人ID
  • 住民資格
  • 職歴
  • 資格
  • 医療履歴

などは再接続できる。

しかし、

生きて戻ったことと、失われた生活が戻ることは別。

喪失中に、

  • 家族が生活費を使用
  • 事業を継続
  • 宿舎を再割当
  • 配偶者が再婚
  • 子どもが別扶養へ
  • 第三者が財産取得

していれば、全てを巻き戻せない。

ここから悲劇も喜劇も生まれる。


26. 生存復帰の悲劇と喜劇

26-1. 悲劇

  • 家族が新生活へ進んでいる
  • 配偶者が再婚している
  • 子どもが別扶養へ入っている
  • 家が別人に割り当てられている
  • 遺族給付を前提に生活が成立している

本人が生きて戻ることで、家族の生活が再び不安定になることもある。

26-2. 喜劇

本人が目の前にいても、IDが喪失状態で失効しているため、

「本人確認書類は?」
「喪失したから失効してる。」
「では本人確認できません。」

という行政コメディが成立する。


第7部 出生登録

27. 出生登録【確定】

原則、

出生後14日以内

に登録する。

登録内容:

  • 氏名
  • 親子関係
  • 主たる養育者
  • 主たる居住単位

「両親の家」とは限定しない。

単親、養育家庭、共同生活、職員宿舎などがあるため、主たる養育者が属する生活・居住単位へ接続する。


28. 出生登録の意味

出生登録は、人間として存在することを認める制度ではない。

登録によって、

都市がその子どもを権利主体として捕捉する。

その結果、

  • 個人ID
  • 住民登録
  • 配給
  • 医療
  • 教育
  • 扶養
  • 居住
  • 就労登録
  • 局票口座

へ接続する。


29. 遅延出生登録

14日を過ぎても登録は可能。

ただし、

  • 出産記録
  • 医療記録
  • 親のID
  • 立会人
  • 居住記録
  • 親子関係

などの証明負担が増える。

外壁出生者ほど不利になる。

詳細な証明水準や成人新規登録手続は未確定。


第8部 未登録出生者

30. 定義【確定】

未登録出生者とは、

出生後、一度も都市の住民登録へ接続されなかった者。

喪失者

以前は都市に存在した。

未登録出生者

都市から見れば、最初から登録されたことがない。

未登録出生者は生存復帰できない。

都市へ入る場合は新規登録。


第9部 雨宮ヒナセ

31. 制度的位置【確定】

雨宮ヒナセは、

未登録出生者

として整理する。


32. 「雨宮」の姓【設計方針】

ヒナセが姓を名乗っていることには意味を持たせる。

両親のどちらかが、

かつて都市住民だった雨宮姓の人物

であり、何らかの事情で喪失し、外壁へ移った後にヒナセが生まれた可能性が高い。

つまり、

雨宮という姓は、ヒナセの中に残った都市の痕跡。

本人にとっては本名。

しかし都市には「雨宮ヒナセ」という住民登録が存在しない。

両親のどちらが雨宮姓だったか、喪失理由、現在の生死は未確定。


33. ヒナセの教育

正式学校ではなく、

外壁共同体そのものが教育機関

になる。

私塾、職人、年長者が、

  • 読み書き
  • 四則計算
  • 局票計算
  • 長さ・重量・水量
  • 地図
  • 危険表示
  • 応急処置

を教える。

さらに労働適性に応じ、

  • 配管
  • 電気
  • 工具
  • ワイヤー
  • 補修
  • 運搬
  • 看護
  • 調理
  • 取引

などを学ぶ。

ヒナセは「教育を受けていない」のではない。

都市教育を受けていない。


34. ボルドは教師の一人

ヒナセはボルドから、

  • 配管
  • 支持
  • 荷重
  • ワイヤー
  • 打診
  • 異常音
  • 工具
  • 危険判断
  • 「触るな」という判断

を実地で学んだ。

技術だけでなく、現場で命を預かる責任感も含めて継承されている。


第10部 外壁医療

35. 医療技能者

外壁には、

  • 喪失した医師
  • 元看護職
  • 元薬剤関係者
  • 産婆
  • 救護経験者
  • 現場処置を習得した者

がいる。

一人の万能天才医師が全部処理する社会にはしない。

医療技能者が点在し、地域・人脈・対価によって利用する。


36. 医療経済

局票だけでなく、

  • 食料
  • 部品
  • 修理
  • 労働
  • 信用

でも医療を受けられる。

ただし、

  • 高度検査
  • 大手術
  • 大量輸血
  • 高度薬剤

になると都市医療が必要。

そこで住民IDの壁にぶつかる。


第11部 外壁社会

37. 外壁民は均質ではない【確定】

外壁には、

  • 正式登録者
  • 喪失者
  • 未登録出生者
  • 偽装登録者
  • 半登録状態の者
  • 意図的に都市との接続を減らした者
  • 一時滞在者

が混在する。

外壁民=喪失者ではない。


38. 外壁での人物評価【確定】

都市の肩書より、

技能 × 信用 × 責任

が重要。

技能だけでも足りない。

約束を守り、判断の結果を引き受ける人間が信用される。

ボルドが尊敬されるのは、

「持つ」と言った梁の下に、他人が入れるから。

ミネも、配給・衛生・看護・取引を継続して回すことで地位を持つ。


39. 外壁は喪失者の堆積場所

外壁は、

都市が何世代にもわたって「喪失した」と処理した人間が、実際には消えずに生活を続けてきた場所

と見ることができる。

ただし全員が法的喪失者ではない。

そこへ未登録出生者が生まれる。

だから外壁は、都市の「喪失」が社会として積層した場所でもある。


40. 悪循環

都市との接続が弱い
→ 記録・納税・労働履歴が薄い
→ 都市側の投資・救護優先が弱い
→ インフラが悪化
→ 自力で違法設備を作る
→ 非公式経済が増える
→ さらに記録から外れる
→ 実際の貢献が記録されない
→ さらに低優先になる。

これが外壁を固定化する。


41. 外壁民が都市へ住みたがらない理由

都市へ入れば、

  • 安定した水
  • 電力
  • 医療
  • 配給
  • 住宅
  • 救護

を得られる。

しかし、

  • 住民登録
  • 納税
  • 職業登録
  • 行動記録
  • 居住規則
  • 設備規制
  • 契約義務

にも捕捉される。

都市に存在を認めてもらうことは、都市に自分を捕捉させることでもある。

そのため、

「都市は便利だ。でも住みたくはない。」

という外壁民がいてよい。

一方、都市登録を望む者、子だけ都市へ行かせたい者もいる。

外壁社会を反都市思想で統一しない。


第12部 局票・移動・住民登録

42. 局票

局票は、

買える権利。

外壁民も交易・仕事によって得られる。

食料、衣服、部品、一定のサービス購入には使える。


43. 住民登録

住民登録は、

制度を利用する資格。

局票を持っていても、

  • 正式宿舎
  • 長期医療
  • 学校
  • 正規就職
  • 扶養
  • 一部昇降
  • 一部区画

には入れない場合がある。

ヒナセは、

肉は買える。だが都市に住むことはできない。

という状態になり得る。


44. 移動

外壁・廃止区画・非公式通路間の移動は比較的自由。

物理的危険が主な障壁になる。

一方、都市の公式施設へ入ると、

  • ID
  • 住民登録
  • 通行権
  • 区画認証
  • 行動目的

が壁になる。

局票だけでは通れない。


第13部 都市と外壁の相互依存

45. 都市は外壁民を利用する【確定】

都市側は外壁民を完全な住民として扱わない一方、

  • 人探し
  • 廃止設備
  • 非公式経路
  • ワイヤー移動
  • 応急工学
  • 現地案内
  • 外壁人脈

を利用する。


46. 人は数えないが、技能は使う

未登録出生者でも、

「あいつならこの配管を見られる」

となる。

しかし正式採用しようとすると、

  • 学歴なし
  • 職歴なし
  • 資格なし
  • 住民登録なし

になる。

命を預けられる技能が、制度上の履歴には存在しない。


47. 悠人と外壁ネットワーク

都市のデータベースでは見つからない人物でも、

  • あだ名
  • 外見
  • 技能
  • 親族
  • 最近いた市場
  • 作業班

を辿れば外壁では見つかる。

浅倉悠人は制度を否定せず、制度外の人間関係も使う。

都市の巨大データベースと、外壁の口コミ網は得意分野が違う。


48. 外壁技術の独自進化

都市技術は、

  • 規格
  • 安全率
  • 資格
  • 正規部品
  • 正式手順

を前提にする。

外壁では、

規格外環境で成立させる技術

が進化する。

代表例はワイヤー移動と応急工学。

都市側はマクロ解析、規格、安全管理、計測に強い。

外壁側は、

「この梁に、今、人間を掛けていいか」

という局所判断に強い。


49. 臨時協力制度【設計方針】

都市側には、

  • 臨時協力
  • 現地案内
  • 災害協力
  • 技能提供
  • 情報提供

などの半公式な接続枠が存在すると考える。

正式雇用ではないため、長期保障や職員宿舎、福利厚生、継続雇用を必ずしも与えず、技能だけ購入できる。

ボルドの仮ID・臨時協力員はこの制度の実例として整理できる。


50. 外壁側も都市を利用する

一方的搾取にはしない。

外壁民も、

  • 局票
  • 部品
  • 情報
  • 廃材
  • 公式市場
  • 都市設備

を利用する。

外壁民側が、

「正式職員にはならない。仕事代だけ払え。」

という態度を取ることもある。


51. 都市も外壁を完全には消せない

外壁を完全に排除すると、

  • 廃止設備の知識
  • 応急修理能力
  • 非公式物流
  • 制度外人口の受け皿
  • 現地労働力

まで失う。

外壁は、

切断可能な余剰領域でありながら、都市が完全には捨てられない緩衝層

でもある。

中核文:

バベルは、外壁民を住民としては信用しない。 だが、都市を維持する時には彼らの腕を信用している。

さらに、

人としての記録より、技能としての実績の方が都市に認識されやすい。

という矛盾がある。


第14部 喪失制度の悪用

52. 基本思想

喪失制度そのものを悪制度にはしない。

制度は必要である。

しかし、

簡便・大量・後戻り可能

だからこそ悪用余地が大きい。


53. 悪用例

53-1. 生存者を喪失者へ押し込む

相続・事業・居住権を得たい者が、生存記録、避難名簿、救護記録などを操作する。

53-2. 偽装喪失

本人が、債務、犯罪、扶養責任、契約、納税等から逃れるため、災害に紛れて喪失者になる。

53-3. 架空喪失者

災害前に架空住民を登録し、補償、給付、仮承継を発生させる。

53-4. 喪失者ID利用

喪失者の配給、技能資格、宿舎、局票、通行権等を他人が利用する。

53-5. 認定を早める

相続・仮承継を早く開始したい者が喪失認定を急がせる。

53-6. 認定を遅らせる

企業・組織が死亡補償を避けるため、「死亡確認できていない」ことを利用し、喪失状態のまま長期保留する。

53-7. 死亡を隠す

逆に死亡者を生存扱いにし、給付、配給、宿舎、職員手当等を受け続ける。


54. 喪失の逆説

制度上死に近い状態になることで、

  • 債務から逃れる
  • 都市の監視から外れる
  • 新しい身分で暮らす

という利益も発生し得る。

外壁には、

「喪失に入ってからの方が自由になった」

と考える人物もいる。


第15部 喪失と宗教・葬送

55. 行政状態と弔いを分ける【確定方向】

喪失認定は死亡認定ではない。

したがって、

行政上は喪失者。
家族はまだ死者として扱わない。

ことが可能。

逆に、

行政上は喪失状態のまま。
家族・共同体は既に死を受け入れ、葬儀を終えている。

ことも可能。

宗教と行政は完全には一致しない。


56. 遺体がない葬送

バベルでは遺体がないことは珍しくない。

したがって葬送は、身体を納めることだけを中心にしない。

代わりに、

  • 名前
  • 写真
  • 道具
  • 衣類
  • 記録
  • 生前の仕事

などを中心に弔う。


第16部 ボルドという喪失者

57. ボルドの位置づけ

ボルドは、

かつて都市へ登録され、その後喪失した人物

として整理すると既存描写とよく噛み合う。

古い記録はある。

現行記録にはいない。

そのため生存復帰は制度上可能。

ただし、第4・第5話時点で正式な生存復帰を済ませたとはしない。

現在は、

限定的に都市へ再接続された喪失者

に近い。

ボルド自身が正式な生存復帰を望むかどうかも未確定。


第17部 作品テーマとしての「喪失」

58. 喪失は行政語であり作品語

喪失とは単なる行政語ではない。

B-19地区そのものが「保持対象から外された」。

人間についても、

都市が現在の保持対象から外す

ことがある。

しかし記録までは消えない。

そして外壁では、

都市から失われた人間が、失われずに生活を続けている。

子を産む。
名前を残す。
技術を教える。
仕事をする。
共同体を作る。

つまり、

都市からの喪失と、人間の死は同じではない。


59. 宗教観との統合

本資料全体を最も短くまとめると、

死者を待ち続ければ、生者の生活が止まる。 しかし、早く死者にしてしまえば、生きている者を奪うことになる。

だから、

  • 死亡認定は慎重
  • 喪失認定は簡便
  • 仮承継で生活をつなぐ
  • 生きて戻れば生存復帰する
  • 登録されず生まれた者も、人間として普通に生活する

という制度になる。

そして宗教は、死後の答えを確定するのではなく、

分からないものは分からないまま、生きた痕跡を残し、生者が生活を続ける

という態度を支える。


第18部 本編への実装指針

60. 説明しすぎない

この制度を長台詞で説明しない。

画面、会話、書類、行動に短く出す。

例:

  • 端末表示「状態:喪失」
  • 「死亡確認ではありません。」
  • 「生存復帰が必要です。」
  • 「出生登録は?」
  • 「してない。」
  • 「じゃあ復帰ではない?」
  • 「最初から登録されてない。」

これだけで十分。


61. ヒナセで見せる

ヒナセが都市で何かを申請する。

「IDは?」

「ない。」

「出生登録は?」

「してない。」

「生存復帰では?」

「そもそも登録されたことない。」

この数行だけで、未登録出生者、外壁社会、都市の壁を見せられる。


62. ボルドで見せる

古い記録では見つかる。

現在登録では見つからない。

本人は目の前にいる。

このズレだけで喪失者を説明できる。


63. 悠人で見せる

都市端末で見つからない人を探すため、外壁民へ聞く。

公式登録より、あだ名、技能、身体的特徴、親族、仕事場の方が役に立つ。

悠人は制度を否定せず、制度外の人間関係も使う。


64. 真琴・選別局で見せる

大量災害後、

  • 数千人の喪失処理
  • 個人の死亡確認
  • 区画マスター更新

が別々に進む。

数字を処理しながら、

記録を消さない

という原則だけは守る。


第19部 連続性監査上の禁止事項

65. 喪失=死亡にしない

絶対に混同しない。

66. 未登録出生者=喪失者にしない

ヒナセには「失った都市登録」がない。

67. 外壁民全員を喪失者にしない

複数の制度状態が混在する。

68. 都市=悪、外壁=善にしない

都市制度には、水、医療、救護、居住、安全という現実的価値がある。

外壁の自由には、事故、医療不足、水不足、無保障という代償がある。

69. 外壁を無教育社会にしない

学校制度外であるだけ。独自の教育・技能継承がある。

70. 外壁医療を万能にしない

高度医療では都市へ依存する。

71. 生存復帰で全てを巻き戻さない

失われた時間と第三者の生活を無視しない。

72. 喪失制度を単なる悪政にしない

制度がなければ、生者の生活が止まる。

73. 宗教を説明台詞だけで見せない

名称、行動、空間、慣用句、弔い方で見せる。


第20部 未確定事項

74. 宗教

  • 宗派数
  • 正式宗教名
  • 聖典
  • 聖職者制度
  • 礼拝頻度
  • 高層宗派と外壁宗派の具体差
  • 正式な葬儀文句
  • 昇降機・区画・礼拝所の正式固有名

75. 喪失認定

  • 最終承認機関
  • 自動処理と人間承認の比率
  • 異議申立て
  • 家族による認定停止
  • 認定取消し手順
  • 各災害の具体判定基準

76. 仮承継

  • 承継順位
  • 誰が仮承継者になれるか
  • 共同経営の場合
  • 未成年子のみの場合
  • 裁定機関
  • 担保・債務
  • 金額基準

77. 生存復帰

  • 喪失中に支払われた補償の扱い
  • 返還義務
  • 第三者取得財産
  • 再婚
  • 扶養
  • 元職場への復帰権

78. 出生

  • 遅延登録審査
  • 親子関係証明
  • 成人新規登録
  • 未登録出生者の資格認定
  • 外壁出生者が都市学校へ入る方法

79. 外壁

  • 私塾の具体的組織
  • 外壁医療者ネットワーク
  • 都市との臨時協力制度の正式名称
  • 外壁側で「喪失者」という語を自称するか
  • 侮蔑語・俗称

第21部 他チャット向け最短引継ぎ

本資料を読む別チャットは、最低限以下を前提とする。

  • バベルの共通死生観は「死後を断定せず、名前と痕跡を残し、生者は生活を続ける」。
  • 宗教は均質ではない。
  • 「終末を待つ宗教」ではなく「終末後にも生活が続いた人間の宗教」という文化軸がある。
  • 宗教は説明より、設備名、区画名、礼拝室、葬送語、日常語へ摩耗して残る。
  • 死亡認定と喪失認定は別。
  • 死亡認定は慎重・個別・原則不可逆。
  • 喪失認定は、死亡を確定せず、都市が現役住民として扱うことを停止する制度。
  • 喪失認定は危難が去った時から可能。
  • B-19のような大災害では大量一括処理できる。
  • 喪失者の生活・家族・生業を止めないため仮承継がある。
  • 仮承継は「本人の通常生活・通常生業の範囲」なら行える。
  • 喪失者が生存確認され都市へ戻る手続が生存復帰。
  • 過去登録がない者は生存復帰できない。
  • 出生登録は原則出生後14日以内。
  • 一度も都市登録されず育った者を未登録出生者という。
  • 雨宮ヒナセは未登録出生者。
  • 雨宮姓は、両親の一方がかつて都市登録者だった痕跡である可能性が高い。
  • ボルドは喪失者として整理すると既存シーンとの整合が良い。
  • 外壁には喪失者、未登録出生者、正式登録者等が混在する。
  • 外壁内部の人物評価は「技能×信用×責任」。
  • 外壁は都市から喪失した人間が生活を継続し、世代を作った社会でもある。
  • 都市側も外壁の技能・人脈・ワイヤー技術・応急工学を利用している。
  • 「バベルは外壁民を住民としては信用しないが、都市を維持するときは腕を信用する」という矛盾がある。
  • 都市と外壁は敵対だけでなく相互依存。
  • 都市制度にも外壁自治にも利点と欠点があり、善悪二分しない。

22. 本資料の核心

バベルでは、人間の存在は一つの登録だけでは決まらない。

都市から見れば喪失した人間が、外壁では働き、愛し、子を育てる。

都市に一度も登録されなかった子どもが、都市の職員より古い設備を知っている。

都市が人間として数えない人物の技術を、都市そのものが必要とする。

そして死者についても、身体が戻らないからといって、生きたことまで消えるわけではない。

そのためバベル社会は、

人は死ぬ。身体は戻らないこともある。 私たちには、その先が何かを知ることはできない。 だから生者は名前と生きた痕跡を残す。 そして、自分たちの生活を続ける。

という死生観を持つ。

制度はその現実を完全には救えない。

だから死亡と喪失を分ける。

喪失した者の家族へ仮承継を認める。

生きて戻れば生存復帰させる。

登録されずに生まれた人間も、都市の外で生活を継ぐ。

「喪失」は死の別名ではない。

都市が見失ったものが、それでも存在し続けること。

これを本資料における『バベル:リビルド』の社会文化的な「喪失」の核心とする。


変更履歴

日付内容
v1.02026-08-29宗教観・死生観、死亡認定、喪失認定、仮承継、生存復帰、出生登録、未登録出生者、雨宮ヒナセ、ボルド、外壁社会、都市との相互依存を統合。
v1.12026-08-29「宗教観が生活へ残したもの」を統合。葬送語、古い昇降機名、区画名、古い礼拝所、各主要人物の死への一言、宗教文化の表現原則を追加。
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