『バベル:リビルド』
外壁民応急工学ガイドライン Ver.1.0
― 設計図には載らない都市の記憶 ―
目的
本資料は『バベル:リビルド』に登場する外壁民が用いる「応急工学」の思想・技術・演出・物語上の役割を整理するためのガイドラインである。
応急工学は、都市建設技術でも都市管理技術でもない。
巨大都市の片隅で数十年生き続けた者達が積み重ねてきた、生存のための現場工学である。
本資料は、他チャット・脚本制作・設定制作時の共通資料として利用することを目的とする。
Ⅰ. 応急工学とは
定義
応急工学とは
「都市の構造・設備・癖・記憶を利用して、限られた資材と時間で生存時間を延長する技術体系」
である。
重要なのは
「都市を守ること」
ではない。
目的は
時間を稼ぐこと。
あと5分。
あと10分。
あと一人。
それが応急工学の存在理由である。
Ⅱ. 基本思想
応急工学は
都市管理AIや構造解析とは思想が違う。
選別局は
都市全体を見る。
応急工学は
目の前の100人を見る。
その違いがある。
比較
| 選別局 | 外壁民 |
|---|---|
| 構造解析 | 都市の記憶 |
| 数値 | 経験 |
| モデル | 現物 |
| 全体最適 | 局所最適 |
| 制御解体 | 応急工学 |
| 都市を延命 | 人命を延命 |
どちらも間違っていない。
目的が違うだけである。
Ⅲ. 応急工学最大の特徴
設計図には載らない都市の記憶
都市には
数百年の歴史がある。
その間、
無数の
・補修
・事故
・火災
・違法増築
・違法補強
・流用部材
が存在する。
設計図は更新されない。
だから
都市そのものが
設計図と一致しない。
応急工学は
この「誤差」を利用する。
つまり
解析に勝つのではない。解析の前提条件を崩す。
これが応急工学の本質である。
Ⅳ. 都市を読む技術
応急工学では
計器より
五感が重要になる。
音
支柱を叩く。
響きで
内部腐食
空洞
緩み
を推定する。
振動
歩くだけで
荷重移動を感じる。
普段との違いから
危険を察知する。
匂い
油
蒸気
焦げ
オゾン
錆
設備異常を推測する。
熱
素手ではなく
近づいた空気で判断する。
温度変化は
配管や荷重変化の手掛かりになる。
視覚
梁の曲がり
ボルトの浮き
塗装割れ
錆の広がり
日々との差を見る。
Ⅴ. 荷重を騙す
応急工学最大の技術。
目的は
構造を強くすることではない。
荷重の流れを変えること。
荷重逃がし
ジャッキ
補強材
仮設支柱
を利用し、
荷重経路を変更する。
目的は
崩落速度を遅らせること。
応急ワイヤー
正式アンカーほどの性能は無い。
しかし
数本張るだけで
荷重経路を変えられる。
選別局が想定した荷重移動を乱す。
仮設拘束
チェーン
梁
H鋼
を用いて
回転だけ抑える。
完全に止めることは出来ない。
しかし
数分延命できる。
部材放棄
守れない構造を切り離す。
一部を犠牲にし
残りを生かす。
これも応急工学である。
Ⅵ. 流体を騙す
都市は
水
蒸気
空気
冷却材
燃料
で循環している。
配管バイパス
閉塞された配管を
廃配管へ迂回させる。
目的は
生活維持。
蒸気利用
熱膨張を利用し
設備を動かす。
(詳細設定は今後検討)
圧力逃がし
安全弁を仮設し
破裂を防ぐ。
(詳細設定は今後検討)
Ⅶ. 応急工学の道具
代表例
・油圧ジャッキ
・チェーンブロック
・携帯溶接機
・ガス切断機
・応急ワイヤー
・仮設ボルト
・発電機
・打音ハンマー
・振動計
・照明
・工具一式
兵器ではない。
すべて保守工具である。
Ⅷ. ボルド達の役割
応急工学は
誰でも使える技術ではない。
長年
保守作業を行ってきた者だけが持つ。
彼らは
都市を知る職人である。
Ⅸ. 制御解体との攻防
選別局は
荷重を
「予定した方向」
へ流す。
応急工学は
荷重を
「予定外」
へ逃がす。
例えば
応急ワイヤー追加。
↓
セナ
「荷重が予定経路を流れていない。」
↓
カイ
現地確認。
↓
応急ワイヤー切断。
↓
再び荷重が戻る。
つまり
戦闘ではなく
荷重経路の奪い合い
となる。
Ⅹ. カイの役割
ドリルクローは
戦闘機ではない。
工兵機である。
役割
・穿孔
・爆薬設置
・障害物除去
・応急ワイヤー切断
・仮設梁切断
・ジャッキ除去
・荷重経路確保
つまり
現場で
荷重を切る技術者である。
Ⅺ. セナの役割
アンカーは
荷重拘束機。
セナは
張力監視を続ける。
応急工学による
荷重変化を
数値から検知する。
数値で都市を読む技術者である。
Ⅻ. ボルドの役割
ボルドは
都市を経験で読む。
設計図ではなく
現場を見る。
応急工学とは
彼らの経験そのものと言える。
ⅩⅢ. 演出方針
応急工学は
派手ではない。
映像では
・ジャッキを締める。
・ワイヤーを張る。
・梁を叩く。
・耳を澄ます。
・匂いを嗅ぐ。
・振動を感じる。
この積み重ねが
巨大都市を相手に戦う姿になる。
ⅩⅣ. テーマ
応急工学とは
都市に勝つ技術ではない。
都市に
少しだけ待ってもらう技術
である。
ⅩⅤ. 今後の検討課題(Ver.2.0候補)
以下は本資料で方向性は定まったものの、詳細な設定や描写方法については今後の検討が必要な項目である。
1. 荷重を騙す技術の体系化
- 荷重逃がしの具体的な手法(ジャッキ、仮設支柱、仮設梁など)
- 応急ワイヤーの設置方法・強度・限界
- 荷重経路を変更する際の判断基準
2. 流体を利用した応急工学
- 蒸気・冷却水・圧縮空気を利用した延命技術
- 配管バイパスの施工例
- 流体制御が構造物へ与える影響
3. 都市の記憶の体系化
- 「都市の癖」を辞典形式で整理する
- 音・振動・匂い・熱など、現場で蓄積された経験則の具体例
- 世代を超えて受け継がれる口伝・格言の収集
4. 外壁民の技術継承
- ボルドからヒナセへと受け継がれる教育方法
- 応急工学を担う集団(保守組・職人集団)の組織形態
- 教科書ではなく、口伝・実地訓練で継承される理由
5. 制御解体との駆け引き
- 真琴が応急工学をどの程度想定して解析しているか
- セナの張力監視とボルドの現場判断の応酬
- カイによる現地対応(応急ワイヤー切断など)の具体的な描写
最終理念
選別局は、
「都市を生かすために切る。」
外壁民は、
「人を生かすために支える。」
どちらも工学であり、どちらも正義である。
『バベル:リビルド』における対立は善悪ではなく、異なる目的を持つ二つの工学思想の衝突として描かれる。これが作品全体を貫く世界観の核となる。